[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/08/20 1:10 に Matsumoto Norikazu が投稿

堅調な国内景気と海外経済リスクの綱引き

 国内景気は、デフレという下地が一向に拭われないものの、政策効果や復興に伴う公共事業の拡大で個人消費や設備投資が改善され比較的堅調に推移している。

 一方、海外の動向をみると6月末のユーロ首脳会議が、スペイン・イタリアの信用不安軽減のため、ユーロ圏の金融監督機関創設と、ESM(欧州安定メカニズム)の基金から金融機関へ直接の資本投入で合意したことで、両国債金利の急上昇は止まり、欧州の債務危機は一時小康を得た。といっても、懸案の経済財政統合については、議論が煮詰まらないままである。さらに7月半ばには、危機に追い討ちをかけるようにスペイン財政の危機収束に一層の懸念が強まり、世界の金融市場に緊張が高まってきた。

 いずれにしても欧州の債務問題は、こんご長期にわたって同地域のマイナス成長を強いるだろう。そのほか、米経済の回復に陰りがみられ、これまで世界経済をけん引してきた中国など新興国も、内需停滞と欧州危機の影響で成長の勢いが衰え、世界は成長のリード役を欠いた状態にある。

 日本にとって海外経済の減速は、円高につながりやすく、その影響を受けやすい製造業を中心に、国内景気は「緩やかな持ち直し」の域を出ない。つまり堅調な内需に対する海外要因の下押し圧力との綱引きという構図である。

 景気の回復を図るには、やはり財政の建て直しと成長力の強化を両立させることにつきる。政府は、デフレ脱却と成長力強化に向けた「日本再生戦略」の原案をまとめた。2020年までに、環境・医療・農林水産・観光など成長分野を中心に100兆円の新たな市場と480万人の雇用創出を目指すとしている。これは、実行段階でいつの間に影が薄れてしまった前内閣の「新成長戦略」の改訂版といったところだが、今度こそ絵に描いた餅とならないよう工程の着実な前進を期待したい。

 内閣府は、6月の景気ウオッチャー調査で、緩やかに持ち直してきた景気に「弱い動きがみられる」と下方修正した。早くも、14年4月からの消費税増税による消費マインド低下の懸念が映し出されている。

 財務省の4~6月期景気判断は、「全体として緩やかに持ち直し」と前回判断を上方修正した。個人消費と雇用情勢の改善を映しているが、一方で欧州の債務危機など海外景気の下ぶれ懸念などのリスクもあるとしている。

 日銀の6月短観(企業短期経済観測調査)は、大企業製造業の業況判断が4半期連続のマイナスとなった。欧州危機の再燃、継続的な円高基調などが、事業経営者の心理を弱気にしている面がうかがわれる。もっとも大企業製造業の業況判断指数は3期ぶりに上向き、同非製造業は4期連続で改善するなど、全体は改善方向にある。3か月後の先行き予想は、同製造業が改善の一方、同非製造業は下降と見ている。同全産業の12年度設備投資計画は、前年度比6.2%増の見通しである。

 このところ日・米・欧の株式市場は、スペインの債務処理を巡る欧州危機の再燃に加え、世界的に景気回復の方向を見出せないまま、個々の材料に敏感に反応する神経質な動きを続けている。しかし、上場企業の13年3月期決算は、年度下期の海外経済の状況を注意深く見守る必要があるものの、例えばスマートフォン(高機能携帯電話)向けなど電子部品の需要堅調にみられるように、企業収益の大幅改善が見込まれている。

2012年上半期(1月~6月)の企業倒産の主な動き

 ここで、2012年上半期(1月~6月)の倒産動向を概括する。企業の倒産件数は6,514件(前年同期比3.9%減)、負債額は2兆86億5,500万円(同20.5%増)である。件数は、「中小企業金融円滑化法」による返済猶予、国の資金繰り支援、復興需要の本格化などで、上半期としては3年連続の減少、さらに過去20年間で最小(平成3年の5,851件以来)となった。負債額は3年ぶりに前年同期を上回った。製造業で過去最大の負債額4,480億円を出したエルピーダメモリの経営破たんが影響している。


 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産件数は4,070件(同5.7%減)、構成比も62.5%(同1.2ポイント減)と、指標では改善がみられる。

 資本金「1億円未満」の倒産件数は6.429件(同3.6%減)、構成比98.7%(同0.3ポイント増)で、負債額「1億円未満」は4,636件(同0.1%減)、構成比71.2%(同2.7ポイント増)、また従業員規模別では「9人以下」が3,913件(同3.2%減)、構成比60.1%(同0.4ポイント増)である。  業種別では、「卸売業」の962件(同10.7%増)を除き、「建設業」1,557件(同10.9%減)、「製造業」901件(同11.6%減)、「小売業」798件(同2.3%減)、「飲食業」438件(同4.6%減)、「サービス業」1,281件(同2.5%減)の5業種が減少した。原因別では「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産は5,289件(同4.9%減)、構成比は81.2%(同0.9ポイント減)である。6月単月の倒産動向については、次項以下で詳述する。