[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/05/10 23:41 に Matsumoto Norikazu が投稿
企業業績は緩やかに回復
※2012/5/17 記事の一部を修正しました

 上場企業の決算発表がほぼ出揃った。全般的には緩やかな業績回復がみられ、25年3月期にはV字回復あるいは上方修正が見込まれる企業も少なくない。しかし、業種間のバラツキは大きい。例えば、ソニーをはじめ、シャープ、パナソニックなど家電大手では、大幅な赤字を余儀なくされている。デジタル家電の取り組み遅れによる国際競争力の低下に加え、円高が業績不振に追い討ちをかける形となった。いま世界のネット事業は、スマートフォンやiPadに象徴されるように急テンポで進展している。中でも、この分野では、技術進展とウォン安を背景にした韓国企業の進出ぶりが著しい。ソニーは、国内・海外を含めて1万人の人員削減など一連の合理化策を打ち出しているが、家電大手を取り巻く事業環境は、厳しさを増している。全体の雇用にも影響は免れない。手放しで先行きを楽観できる状況でないことは明らかである。

 各金融機関の中小企業景況調査は、「持ち直しの動きが続いている」が主流である。景気持ち直しには、今後の消費の回復に期待する向きは多い。

 といっても、外部的には原油高と欧州の財政危機の再燃懸念、さらに国内では原発事故の処理とからむ電力需給の行方など、当面のリスク要因を抱えている。

 日本経済は、昨年9月以降、欧州の債務危機、タイの洪水、為替相場での超円高などから、一時停滞を余儀なくされてきた。しかし、大震災やタイ洪水で寸断されたサプライチェーン(部品供給網)の修復、東日本大震災の復興需要、エコカー補助金の復活などの政策効果、米国経済の復調などを支えに、まず自動車などの生産・輸出が回復、さらに円高一服、欧州財政危機の小康状態などで、景気は緩やかな回復基調にある。事実、米NY株価は13,000ドル前後で推移している。

 内閣府の3月景気ウオッチャー調査は、景気の現状判断指数が2か月連続の改善を示した。円高の一服と東日本大震災の復興需要の本格化が寄与したとして、前月の判断を上方修正した。日銀は、3月の短観(企業短期経済観測調査)で大企業・製造業の業況判断について、前回12月調査の横ばいとしている。上場企業の明るい先行き見通しの一方で、欧州の景気後退、原油価格の高騰などから景気回復の足取りは重いとみる企業も少なくない。

 2011年度の貿易収支は、過去最大の4兆4,101億円の赤字幅となった。背景にLNG(液化天然ガス)の輸入量急増がある。原発の再稼動に先行き見通しがつかない中で、代替燃料LNGの輸入が増え続ければ、貿易赤字が長期化する懸念もある。

 欧州では5月6日、帰趨が注目されたフランス大統領選の決戦投票とギリシャ総選挙が行われた。結果は、仏社会党のオランド氏が勝利、ギリシャではEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)の財政緊縮策を受け入れた与党が過半数を確保できなかった。オランド氏は、緊縮財政の見直しを掲げて当選しただけに、財政規律の緩みで再び金融市場に緊

張感が高まるのではないかとの懸念が強い。ギリシャでは、緊縮財政に対する世論の反発が強く反緊縮派が総選挙で過半数を占め、さらにその他EU内各国の動向もからみ、世界市場は欧州財政への警戒感を強めている。

円高関連の倒産が増える

 3月期倒産の特色は、(1)倒産件数が3月としては、平成17年の1,177件に次ぐ少ない規模、(2)負債総額が4か月連続で前年同月を上回った、(3)件数では円高関連倒産と資本金「1億円未満」の倒産が増えた、などである。

 3月期の倒産件数は1,192件(前年同月比2.5%減)、負債額は3,340億5,600万円(同23.5%増)である。このうち負債額「1千万円以上」の件数は1,161件(同1.9%減)、負債額は3,339億3,100万円(同23.6%増)だった。

 負債額の増加は、新藤電子工業とグループ7社で、相互の債務保証分を含め負債総額が1,525億5,000万円に上ったためである。8社負債額の全体シェアは、45.7%に達する。負債額「100億円以上」の大型倒産でも、すべて新藤電子工業を含むグループ6社が占めた。同グループは、オフセット印刷の「(株)新藤」(負債総額270億200万円)、集積回路製造の「新藤電子工業(株)」(同266億5,000万円)、不動産管理の「東京保全(株)」(同243億3,300万円)、オフセット印刷の「新藤テクニクス(株)」(同241億9,100万円)、紙製品製造販売の「新藤販売(株)」(同241億円)、写真製版の「日星ビスコム(株)」(同239億2,400万円)、電子部品製造の「新藤マイクロテクニカ(株)」(同17億円)、不動産賃貸業の「新藤アセット(株)」(同6億5,000万円)の各社。いずれも会社更生法を申請した。

 東京商工リサーチの調べによると、3月の東日本大震災関連倒産は53件だったが、実質的に破たんしているものの法的手続きをとっていない企業も多く、今後、それらが徐々に顕在化してくるとみられる。  なお、小規模企業(製造業その他は従業員数20人以下、商業・サービス業は同5人以下)の倒産は746件(前年同月比6.6%減)、全体の構成比は前年を2.8ポイント下回る62.6%である。