[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/01/16 18:28 に Matsumoto Norikazu が投稿
デフレ、自然災害、超円高・株安に苦悩する企業群

 この1年は、いっこうに解消しないデフレ基調、歴史的な円高と株安、東日本大地震やタイの洪水など個人・企業に多大な被害を及ぼした自然災害の発生、それに伴う原発の安全性への疑問、EU(欧州連合)加盟国の財政危機、先進国の財政・金融不安を背景にした世界経済の動揺など、まさに激動の年だった。しかも、いずれの問題も未解決のまま新しい年に持ち越された。

 これらの動きは、世界がグローバル化の進展とともに新しい経済・金融構造に入ったことをうかがわせる。経済成長のエンジン役が、徐々に新興国にシフトしているのは象徴的である。昨年は、中国、ブラジルのGDPが躍進した。新しい年は、閉塞感が覆う先進国の社会・経済状況に、具体的な打開策をどう講じていくかが最大の課題となる。いい流れをつくるにしても、悪い流れを呼び込んでしまうにしても、時は人の都合や思惑を超えて経過する。

 とりわけシビアな問題として当面するのが、欧州発の財政危機である。IMFのラガルド専務理事も、「世界中、欧州の混乱から無縁なところはない」と警告を発する。危機の連鎖を防ぐため、日・米・欧の6中央銀行が、ドル資金の供給拡大で協調することになった。これで市場の緊張感はやや和らいだが、だからといって基本的な問題が解決したわけではない。EU圏内では、国債が売られる国、応募が満たされず札割れになる国、国債の格下げが取り沙汰される国など、市場の動揺は続いている。格付け会社のS&P(スタンダード&プアーズ)は、ユーロ圏15か国の国債とEFSF(欧州金融安定基金)を格下げの方向で検討中という。こうなると、ユーロ圏の危機対策そのものが危機に陥る。

 欧州危機は、アジアの新興国の成長にブレーキをかけかねない。新しいエンジンの働きが鈍れば、世界経済の先行きは暗い。年明けに新しい展望が開けることを期待したい。

約2.5兆円の第四次補正予算で景気下支え

 国内は、相変わらずの円高に加え、タイの洪水の影響が尾を引いている。政府は、景気下支えのため約2.5兆円規模の第四次補正予算案を決めた。円高対策、中小企業資金繰り対策をはじめ、農業振興策、エコカー補助金などに向けられる予定。来年の通常国会に提出される。

 政府・日銀、民間の調査機関などが出す最近の景気動向指数は、「持ち直しの動きが一服」でほぼ足並みを揃える。内閣府は10月景気動向指数で、基調判断を「下げ止まり」として据え置いた。財務省の7~9月期・設備投資によれば、前年同期比9.8%減と2四半期連続の減少である。

 日銀は12月の短観(短期企業経済観測調査)で、大企業・製造業の景況感について2四半期ぶりのマイナスを報じた。震災後に立ち直りかけた景気が足踏みしはじめたようだ。長引く超円高に加え、欧州の財政・金融危機に伴う世界経済の減速、タイの洪水で多くの日系企業が被災したこと等から企業心理が急速に冷え込み、設備投資、雇用への影響が懸念される。3か月後の予想では、中小企業・製造業、非製造業はいずれもマイナス幅を広げている。当面、好転の材料は見当たらず、企業経営者の間にはじんわり停滞感が広がっている。景気は弱含みのまま新年を迎えた。補正予算による刺激効果に期待したい。

 11月の倒産件数は1,124件(前年同月比2.5%増)、負債額は1,878億700万円(同31.5%減)となった。このうち負債額「1千万円以上」は1,095件(同3.2%増)、負債額は1,876億7,500万円(同31.5%減)である。件数の前年比増加は7月以来4か月ぶりのこと。一方、負債額の減少は負債額「10億円以上」の大型倒産が今年2番目の低水準に止まったことに原因している。

 東京商工リサーチの調査によると、上場企業の倒産は前月に続きゼロ。11月の円高関連倒産は、今年最多の10件となり、さらに、12月には円高と運航経費に経営を大きく圧迫された「ドーヴァル海運」が倒産に追い込まれている。震災関連の倒産は48件で、11月までの累計は475件に達した。負債額「100億円以上」の倒産は、三重のゴルフ場「名阪開発(株)」(負債総額100億円)と大阪の経営コンサルタント「(株)人間と産業開発研究所」(同100億円)の2件である。