2015年 4月(2015年2月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
3月の日銀短観企業業況判断指数(DI:「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いた値)はプラス12で前年同月比横ばい、先行きは10と悪化を予想している。 また、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査2月速報値ではギャップ調整後(サンプル企業の入れ替えによる新旧ギャップの調整)の定期給与は前年同月比0.5%増となり、平成22年を100とした実質賃金指数は94.8(前年同月比2.0%減)であった。 これらの指標をみる限り企業の先行き不透明感は依然として根強く、実質的な賃金が物価の上昇に追いついていない状況がうかがえる。 15年ぶりに2万円を超えた株価が本質的な企業価値からの乖離を危惧する声に対して、日銀の黒田総裁は企業部門の収益水準の高さを理由に市場の過度な強気化を否定した。 バブル化を懸念する声が上がる一方で、労働者の消費マインドをけん引する賃金上昇のペースは鈍く、金融政策を一因とする円安や株価高騰の陰で景気の浮揚力の弱さが浮き彫りとなっている。 1月の倒産件数は721件(前月比3.2%減、前年同月比10.8%減)、負債額は1,513億4,600万円(前月比10.0%減、前年同月比30.1%増)で2014年の最少件数であった12月以降の低い水準が維持された。負債額1千万円以上の倒産は692件(前月比4.0%減、前年同月比11.5%減)、負債額は1,511億8,000万円(前月比10.0%減、前年同月比30.1%増)であった。負債額100億円超の倒産が3か月連続で発生し、負債総額は前年同月比で大きく増加した。 業種別では「一般貨物自動車運送業」で前年比減少が目立ち、原油価格下落が業容の改善に寄与したものと思われる。 |
[01]2月の主な動き
(1)倒産件数は引き続き低水準で推移 2月の倒産件数は721件(前月比3.2%減、前年同月比10.8%減)、負債額は1,513億4,600万円(前月比10.0%減、前年同月比30.1%増)で2014年の最少件数であった12月以降低い水準が保たれている。負債額1千万円以上の倒産は692件(前月比4.0%減、前年同月比11.5%減)、負債額は1,511億8,000万円(前月比10.0%減、前年同月比30.1%増)であった。 (2)小規模企業倒産構成比は85.0%に低下 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は613件(前月比5.8%減、前年同月比13.4%減)で月次倒産全体に占める割合は85.0%(前月比2.4ポイント低下、前年同月比2.6ポイント低下)だった。従業員規模別集計でも「4人以下」が前年同月比11.6%減、「5人以上9人以下」で同14.6%減と、小規模な企業の倒産減少が目だった。 (3)不況型倒産は「販売不振」の下げ幅低く、構成比は前年同月を上回る 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は「売掛金回収難」を除けばすべての区分が前年同月比で減少した。「販売不振」482件は1999年2月以来の低水準となったものの、他の区分と比較して下げ幅が低く、構成比は逆に上昇した。 不況型倒産(販売不振、既往のシワ寄せ、売掛金回収難の合計)は567件(前月比3.7%減、前年同月比7.0%減)で、1993年1月以来最少となった2014年12月(560件)に次ぐ低水準であったが、月次倒産に占める割合は81.9%(同0.2ポイント上昇、同3.9ポイント上昇)となり、構成比は前年同月比で上昇した。 (4)「一般貨物自動車運送業」の前年比減少目立つ 業種別の集計では「卸売業」のみが前年同月を上回った。やや増加基調であった「その他」は61件(前月比%9.0減、前年同月比9.0%減)と2か月連続で減少した。とくに「一般貨物自動車運送業」が前年同月比50.0%減となった事が大きく影響している。 「卸売業」の中分類明細では「医薬化学品」「建築材料家具建具」「その他」と幅広い品目で前年同月比が増加した。 |
[02]負債規模別の動向
~負債額10億円以上が急増~ 負債規模別の倒産件数は「1000万円未満」と10億円以上の2区分で前年同月を上回った。 「5億円以上10億円未満」19件(前月比26.9%減、前年同月比42.4%減)は1990年8月(11件)以来の最少となった2014年12月(19件)と並ぶ低水準だった。 負債額1000万円未満は29件(前月比20.8%増、前年同月比11.5%増 )となり、月次倒産全体(721件)に占める割合は4.0%で、前月比0.8ポイント上昇、前年同月比0.8ポイント上昇し、4か月ぶりに4%台に乗せた。同様に10億円以上の合計32件(前月比113.3%増、前年同月比68.4%増)の構成比は4.4%で、2012年10月(4.5%)以降で最高となった。 負債額100億円以上の倒産は蒲郡海洋開発(株)(負債額200億円、マリーナ業、特別清算、愛知県)の1社。 |
[03]業種別の動向
~「一般貨物自動車運送業」の倒産件数は前年比で大きく減少~ 負債額1000万円以上の業種別倒産件数は、「卸売業」を除くすべての区分で前年同月を下回った。 「建設業」「製造業」の前年同月比はともに20%を超え、「建設業」は2014年6月(前年同月比3.3%増)の一時的な増加を挟み2012年3月からの減少基調を維持している。「製造業」も同様に2013年7月の前年同月比横ばいを挟んで2013年5月から減少基調で推移を続けている。 一方、「卸売業」は5か月ぶりの前年同月比増加となり、中でも「医薬化学品」「建築材料家具建具」「その他」での増加が目立った。 業種大分類の「その他」61件は「一般貨物自動車運送業」での減少(前年同月比50.0%減)が影響し、全体では前年同月比9.0%減となった。 業種大分類「その他」明細
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[04]原因別の動向
~「不況型倒産」件数は低水準で推移するも構成比は81.9%~ 負債額1000万円以上の原因別倒産件数は、「売掛金回収難」を除くすべての区分で前年同月を下回った。 「売掛金回収難」6件(前月比横ばい、前年同月比50.0%増)は全体へのインパクトは少ないものの過去12か月の平均(3.7件)を大きく上回り、やや高めの水準となった。 「販売不振」482件(前月比5.1%減、前年同月比5.1%減)は減少幅こそ小幅となったが、1999年2月(478件)以来の低い水準となった。 「その他」の明細では「信用性低下」4件(前月比100.0%増、前年同月比33.3%増)、「在庫状態悪化」1件(前月比横ばい、前年同月発生なし)、「設備投資過大」4件(前月比33.3%減、前年同月比42.9%減)、「偶発的原因」12件(前月比9.1%増、前年同月比20.0%減)であった。 「不況型倒産」(「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」の合計)は567件(前月比3.7%減、前年同月比7.0%減)で、1993年1月以来の最少件数となった2014年12月(560件)に次ぐ低い水準となった。しかし月次倒産に占める割合は81.9%(前月比0.2ポイント上昇、前年同月比3.9ポイント上昇)でやや高い水準となった。 |
[05]従業員規模別の動向
~小規模企業倒産の構成比が2年3か月ぶりの低水準~ 負債額1000万円以上の従業員規模別倒産件数は、「100人以上299人以下」2件(前月比50.0%減、前年同月比100.0%増)と「不明」1件(前月比横ばい、前年同月発生なし)の2区分で前年同月を上回り、「300人以上」が発生なしで同横ばい、その他の区分は前年同月を下回った。 従業員「4人以下」は472件(前月比6.9%減、前年同月比11.6%減)、月次倒産に占める割合は68.3%(前月比2.1ポイント低下、前年同月比0.1ポイント低下)で4か月ぶりに70%を割った。 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は613件(前月比5.8%減、前年同月比13.4%減)で、月次倒産に占める割合は85.0%(前月比2.4ポイント低下、前年同月比2.6ポイント低下)となり、2012年11月(84.2%)以来の低い水準となった。 小規模企業の倒産件数構成比、前年同月比の推移
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[08]倒産形態別の動向
~「破産」構成比は前年比で大きく低下~ 負債額1000万円以上の形態別倒産件数は、「再生手続」「特別清算」で前年同月を上回り、その他の区分は横ばい、または前年同月を下回った。「再生手続」は2014年6月と8月の横ばいを挟む10か月ぶりの前年同月比増加、「特別清算」は2014年12月から3か月連続で前年同月を上回った。 「銀行取引停止処分」は2014年7月から8か月連続で前年同月を下回ってきたが、2015年2月は前年同月比7.6%減と下げ幅を縮小した。 月次倒産に占める法的倒産の割合は86.7%(前月比1.9ポイント低下、前年同月比0.4ポイント低下)で5か月ぶりに87%を割った。また、法的倒産に占める「破産」の割合は91.3%(同0.6ポイント低下、同2.8ポイント低下)と前年同月から大きく低下した。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
~営業年数6年以上で「不況型倒産」の構成比高まる~ 負債額1000万円以上の倒産原因別・営業件数別件数のクロス集計をみると、営業年数別集計で前年同月を上回った「2年未満」と「30年以上」の2区分はいずれも「販売不振」による増加が主因だった。 また、前年同月を下回った2年以上~30年未満の各区分は「販売不振」「放漫経営」「他社倒産の余波」がいずれも前年同月を下回っている。 各営業年数ごとの「不況型倒産」(「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」の合計)は「2年未満」が前年同月比500.0%増の6件、「30年以上」が同19.6%増の183件となり、「販売不振」増加の影響を受け、全体の件数変動と同じ動きを示した。「不況型倒産」の構成比は営業年数6年以上の区分すべてが前年同月から上昇している。
倒産原因別・営業年数別倒産件数前年同月比増減率(負債額1000万円以上)
倒産原因・営業年数別倒産件数前年同月比増減数(負債額1000万円以上)
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