[00]最近の景気動向と企業倒産

2015/02/04 22:59 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2015/02/04 22:59 に更新しました ]
輸出の回復と製造の国内回帰

 輸出が上向きの兆しをみせている。2014年12月分の貿易統計では輸出が前年同月比12.9%のプラスとなり、本格的な回復基調になっている。貿易額は米国の伸びが著しく、9月以降は中国を超える規模で推移している。米国向けの自動車輸出は原油安が追い風となっている面もあり、当面継続するものとみられている。また大手電機、自動車メーカーが生産拠点を日本国内に回帰させる動きも本格化しつつある。為替水準が円安方向にシフトしていることも理由の一端ではあるが、新興国での人件費高騰や品質管理、物流のコスト、さらには地政学的リスクなどを考えた場合に海外生産のメリットが剥落しつつあるのも一因である。

 需要低迷や関連する原油価格下落による世界的なデフレ圧力は各国の金融政策に大きな転換を迫っている。1月はスイス国立銀行がECB(欧州中央銀行)の量的緩和導入を前に2011年9月から継続していた1ユーロ=1.2スイスフランの上限を撤廃し金融市場は混乱を極めた。その後、21日にカナダ中央銀行が政策金利を引き下げたのを皮切りにECBは22日の理事会で2015年3月からの金融緩和を決定し、28日はシンガポール通貨庁が金融緩和に踏み切った。2月に入りオーストラリア中央銀行が政策金利を引き下げ、中国人民銀行も市中銀行の預金準備率を引き下げるなど世界的緩和の流れに追従する動きを見せ、さながら「通貨安競争」の様相を呈している。

 わが国においてもすでに歴史的な規模での金融緩和が行われ、先行指標である株価や為替に大きな変化を及ぼし、円安メリットや大手メーカーの収益構造改善の努力がいよいよ業績に現れはじめ、電機・自動車の生産拠点国内回帰など、国内経済に関する明るいニュースも聞かれ始めたことは前述のとおりだ。この一連の動きが懸案の個人消費拡大に繋がれば景気回復もいよいよ軌道に乗ることとなる。

 個人消費が弱い原因のひとつとして長期間の実質賃金低下が指摘されている。その理由は労働者の正規雇用から低賃金の非正規雇用へのシフトであり、厚生労働省の資料を見る限り、雇用者数の増加とは非正規雇用の増加であることがわかる。

 現政権での雇用制度改革は、高い労働生産性の実現に向けて従来の雇用維持から労働移動支援への転換を掲げている。経営の危機に瀕した企業が雇用を維持することで成長余力のある企業への人材移転が阻害されているとの考えによるものだ。このように雇用のミスマッチを解消し、円滑な労働移動を図ることは産業を内側から新陳代謝する手法として大いに期待できる反面、失業者を適切な労働環境に再配置する為の方策が十分に機能している必要がある。失業者がたちまち生産性の低い低賃金労働に吸収されるのでは本末転倒であるからだ。また、政府が非正規雇用の活用で労働力人口減少や少子化問題など様々な問題解決を行おうとする場合、最初に必要なのは正規雇用と非正規雇用の格差是正、つまり同一労働同一賃金の法制化である。雇用制度改革が単なる人件費削減や解雇要件緩和の議論ではないことを期待したい。

 12月の倒産件数は712件(前月比6.8%減、前年同月比8.7%減)、負債額は1,784億5,500万円(前月比54.3%増、前年同月比を下回った。負債額1千万円以上の倒産は686件(前月比6.8%減、前年同月比8.5%減)、負債額は1,783億1,400万円(前月比54.4%増、前年同月比32.7%増)であった。倒産件数は2014年で最少となり、低い水準に抑制されている。
 業種別集計では飲食業や運送業、不動産業のほか、農業で前年同月比が増加となった。為替相場や資源価格の変動によっても強い影響を受けるが、これらの要因が倒産件数の変化として顕在化するまでには一定の時間差がある。円安によって輸入資源価格が高騰する一方で2014年6月以降急激に進んだ原油価格の下落が業績向上に寄与することが想定されるものの、それが倒産件数の減少となって表われるまでには、あと若干の期間を要するものと思われる。