2015年 1月(2014年11月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
全体的に消費マインドは低迷 7-9月期のGDPが予想に反してマイナス成長となった要因に個人消費と企業の設備投資の低迷がある。内閣府の「景気ウォッチャー調査」では2014年11月時点の現状判断は横ばいを示す50を下回る41.5であり、家計関連では小売や飲食、住宅で40を下回る低い水準だ。地域別では「西高東低」の傾向がみられ、「北海道」「東北」「関東」はいずれも40を下回った。日本政策金融公庫が3大都市圏の取引先企業を対象に行った11月の「中小企業景況調査」では2014年業況判断(前年比)が改善したとする企業が35.2%と2013年度の27.8%を7.4ポイント上回り、「改善」から「悪化」を差し引いたDIは15.9のプラスとなった。一部で業況の好転が期待できる企業が出てきている一方で、全体的な消費や投資マインドは冷え込んだままという状況と思われる。 11月の倒産件数は764件(前月比9.2%減、前年同月比15.3%減)、負債額は1,156億3,700万円(前月比7.0%減、前年同月比16.3%減)で、倒産件数は1990年9月以来の低水準となった8月に次いでことし2番目に少ない件数となった。倒産件数は減少傾向を維持しているが、急速に進んだ円安や人手不足による人件費の高騰などで運輸業の収益が圧迫されている。また、農業・漁業などの一次産業でも倒産増加の動きがみられ、後継者不足などとの複合的要因から発生する倒産についても注目したい。 |
[01]11月の主な動き
(1)倒産件数はことし2番目の低水準 11月の倒産件数は764件(前月比9.2%減、前年同月比15.3%減)、負債額は1,156億3,700万円(前月比7.0%減、前年同月比16.3%減)で、倒産件数は1990年9月以来の低水準となった8月に次いでことし2番目に少ない件数となった。負債額1千万円以上の倒産は736件(前月比8.0%減、前年同月比14.6%減)、負債額は1,154億7,700万円(前月比7.0%減、前年同月比16.3%減)であった。 (2)小規模企業倒産の構成比が90%超え 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は689件(前月比5.7%減、前年同月比13.0%減)で月次倒産全体に占める割合は90.2%(前月比3.3ポイント上昇、前年同月比2.4ポイント上昇)と高い水準で推移している。件数は前年同月比で減少となった。 (3)「既往のシワ寄せ」減少で不況型倒産構成比が80%を割る 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は「他社倒産の余波」が3か月連続で前年同月を上回り10月に続いて50件を超す高い水準となった。一方で「既往のシワ寄せ」が4か月連続で90件を割る水準で推移しており、11月は前年同月比28.1減となる82件にとどまった。同様に「過少資本」も前年同月比で減少を続けており、企業の資金繰り改善がうかがえる。 この影響で「不況型倒産」(「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」)は588件(前月比10.2%減、前年同月比16.1%減)と大幅に減少、構成比は79.9%(前月比2.0ポイント低下、前年同月比1.4ポイント低下)となった。 (4)業種別では一般貨物運送業など改善も一次産業でわずかに増加 業種別の集計では「その他」だけが前年同月を上回っており、その内訳では一般貨物自動車運送業や不動産代理業で倒産件数が減少する一方、野菜農家や酪農・食肉牛生産業などで増加した。後継者難に直面する業種の動向にも注視したい。また、「小売業」は1990年7月(68件)依頼の低水準で、集計開始以降で4番目に少なく、11月としては最少件数となった。 |
[02]負債規模別の動向
~倒産発生の全区分で前年同月を下回る~ 負債規模別の倒産件数は、倒産が発生しなかった「100億円以上」を除きすべての区分で前年同月を下回った。 9月に1.8%の前年同月比増加となったのち、再び倒産件数が減少傾向に向かう中で、その勢いがさらに増した格好である。 9月以降3か月連続して「100億円以上」の倒産はなく、月次全体の負債総額は1,156億3,700万円で、1990年9月(920億4,780億円)以来の低水準となった。 11月の負債額上位5社は以下のとおり。(株)テイー・シー・ワークス(負債額93億円、ディスプレイ業、特別清算、東京都)、小路建設(株)(負債額47億円、生コンクリート製造業、特別清算、滋賀県)、中小企業飲食機構(株)(負債額44億6,800万円、信用保証機関、特別清算、東京都)、五鈴精工硝子(株)(負債額40億円、光学機械用レンズ・プリズム製造業、再生手続、大阪府)、(株)井上工業(36億9,400万円、プラスチック製容器製造業、破産、福井県)。 |
[03]業種別の動向
~「小売業」が1990年以来の低水準~ 負債額1千万円以上の業種別倒産件数は、「その他」を除き全ての区分で前年同月を下回った。 「その他」の内訳では一般貨物自動車運送業や不動産代理業で倒産件数が減少する一方、野菜農家や酪農・食肉牛生産業などで増加した。後継者難に直面する業種の動向にも注視したい。 「建設業」「製造業」「小売業」も大幅に前年同月比が減少した。「建設業」143件(前月比16.4%減、前年同月比20.1%減)の中分類「建築工事」50件(同11.1%増、同7.4%減)は業種全体としては減少傾向に勢いがないものの、かろうじて前年同月を下回った。「小売業」の68件は1990年7月(68件)依頼で、集計開始以降で4番目に少なく、11月としては最少件数となった。 |
[04]原因別の動向
~取引先倒産「他社倒産の余波」が徐々に増加傾向~ 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は、「他社倒産の余波」「その他」を除く区分で前年同月を下回った。「その他」24件の内訳は「偶発的原因」が16件、「信用性低下」が4件、「設備投資過大」が4件である。前年同月と比べて「偶発的原因」が1件増加した。「偶発的原因」には代表者の死亡が含まれるため、後継者難が叫ばれる中でこの区分がどのような動向を示すか注視したい。 「既往のシワ寄せ」は8月以降100件を割り続け、順調に減少傾向をたどっている。逆に「他社倒産の余波」は3か月連続で前年同月を上回っており、連鎖倒産防止に向けた取引先管理と資金手当ての重要性が再確認される。 11月の「不況型倒産」(「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」)は588件(前月比10.2%減、前年同月比16.1%減)と大幅に減少、構成比は79.9%(前月比2.0ポイント低下、前年同月比1.4ポイント低下)となった。 |
[05]従業員規模別の動向
~「4人以下」の構成比は集計開始以来最高、小規模企業倒産の構成比も90%超える~ 前年同月比の減少率は従業員規模に比例して大きく、「300人以上」の発生件数は3か月連続でゼロであった。 その結果、従業員「4人以下」が月次倒産全体に占める割合は73.9%(前月比4.1ポイント上昇、前年同月比4.5ポイント上昇)と7月以来の過去最高を更新した。 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産件数は689件(前月比5.7%減、前年同月比13.0%減)で月次倒産に占める割合は90.2%と高い水準に達した。 小規模企業の倒産件数、前年比、構成比の推移
|
[08]倒産形態別の動向
~「銀行取引停止」が集計開始以来最少の72件~ 負債額1千万円以上の形態別倒産件数は、「その他」と倒産のなかった「会社更生法」を除きすべて前年同月を下回った。 「銀行取引停止」は1979年4月の集計開始以来最少となる72件で、この影響で月次倒産に占める法的倒産の割合は前月の87.3%から88.7%に1.4ポイント上昇した。一方、「任意整理」を中心とした「その他」は過去12か月の平均(約9.8件)を超える11件で、推移としては減少傾向ながら一定の割合を占めている。 先述のとおり月次倒産に占める「法的倒産」の割合は88.7%(前月比1.4ポイント上昇、前年同月比1.8ポイント上昇)法的倒産に占める「破産」の割合は93.3%(同0.3ポイント低下、同0.9ポイント上昇)であった。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
~「販売不振」と「既往のシワ寄せ」減少が幅広い営業年数で顕著~ 営業年数・倒産原因別倒産件数(負債額1千万円以上)
営業年数・倒産原因別倒産件数前年同月比増減率(負債額1千万円以上)
営業年数・倒産原因別倒産件数前年同月比増減数(負債額1千万円以上)
|
1-10 of 11