2014年11月(2014年9月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
中小企業の設備投資は緩やかに上昇 4月に消費税が増税された後、各種経済指標に注目が集まっている。 総務省が発表する家計調査のなかで、2人以上の世帯の消費支出から世帯規模、1か月の日数、物価水準の影響を除き、2010年を100とした「消費水準指数(住居等除く)」は家計消費の面から生活水準を計る指標で、4月99.3(前年同月比▲6.5)、5月90.9(同▲6.4)、6月92.9(▲3.5)、7月91.9(同▲6.1)、8月94.0(同▲3.2)、9月93.0(同▲5.6)で、いずれの月も前年同月を下回り、東日本大震災があった2011年をも下回る水準となった。低下した項目は食料、被服、保健医療、教育など広範囲にわたっている。目下のところ、個人消費に明るい兆候は見られない。 ※2014/10/31発表の数値を追加しました。 企業はこの現状をどのようにみているのだろうか。日本政策金融公庫が発表した全国中小企業動向調査では、7-9月の実績業況判断DIが中小企業で+3.3、小企業で▲33.4、10-12月見通しで中小企業が+5.9、小企業で▲33.8と、緩やかな回復を続ける中小企業と比べて小企業の業況見通しは厳しい。しかし、中小製造業の設備投資額は9月修正計画で前年度実績対比9.0%増加し、投資額はリーマン・ショック以降で最多となる見通しである。円安傾向の長期化が見込まれる中で海外設備投資の伸びは抑制されつつあり、国外経済の回復度合いによっては国内生産や輸出が緩やかに上昇することも期待される。 日銀の大胆な金融緩和や機動的な財政政策によって一定の成果を挙げてきた政府は次なる成長戦略の実現に全力を注いでいる。高齢化先進国としての産業育成を始めとして、就労の効率化によって国民一人あたりの労働生産性の向上を目指している。労働者の生活を守りながら企業の収益力を強化するには、効率の高い企業に資金や労働力を集中させることや、女性・高齢者を脇役にしない全員参加型社会の構築も避けて通れない課題であろう。労働生産性の向上は賃金水準の引き上げや余暇時間の増加につながるもので、これらの変化が少子化を根本的に解消し、国民の幸福度を高める原動力となることを期待したい。 建築工事やサービス業で倒産増加 9月の倒産件数は856件(前月比12.8%増、前年同月比1.8%増)で5か月ぶりに前年同月を上回った。業種別では「建設業」「製造業」「小売業」を除き前年同月を上回った。「建設業」の中分類では「建築工事」が60件に迫る59件(前年同月比51.3%増)と突出した伸びで、8月の減少から一転した。依然、中小建築業は人手不足や資材高騰による厳しい状況が続いており、今後の動きにも注目したい。 |
[01]9月の主な動き
(1)倒産件数は5か月ぶりに前年同月比増加 9月の倒産件数は856件(前月比12.8%増、前年同月比1.8%減)、負債額は1,369億2,800万円(前月比0.7%増、前年同月比28.0%減)で、倒産件数は5か月ぶりに前年同月を上回った。負債額1千万円以上の倒産は827件(前月比13.8%増、前年同月比0.9%増)、負債額は1,367億9,900万円(前月比0.8%増、前年同月比28.1%減)であった。 (2)小規模企業倒産が5か月ぶりに前年同月比増加 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は742件(前月比10.6%増、前年同月比2.1%増)で月次倒産全体に占める割合は86.7%(前月比1.7ポイント低下、前年同月比0.3ポイント低下)と依然高い水準ながら、前年同月と比べてやや構成比を下げた。 (3)不況型倒産の前年同月比は5か月連続で低下 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は「販売不振」の件数が8月までの減少傾向から僅かに増加に転じる一方、「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」はやや落ち着いた動きとなり、「不況型倒産」は677件(前月比15.3%増、前年同月比1.6%減)、構成比は81.9%(前月比1.2ポイント上昇、前年同月比2.0ポイント低下)と前年同月比で低下した。 (4)建築工事業の倒産は再び増加 8月に37件と一応の落ち着きを取り戻した格好だった「建設業」中分類の「建築工事」は59件発生し、前月比59.5%増、前年同月比51.3%増と、ともに大幅な増加を見せた。「卸売業」の中分類では「建築材料・家具建具」が28件(前月比86.7%増、前年同月比100.0%増)と急増した。 |
[03]業種別の動向
~「建築工事」が再び増加へ~ 「建設業」は162件(前月比22.7%増、前年同月比5.8%減)で、そのうち中分類の「建築工事」は59件(前月比59.5%増、前年同月比51.3%増)と、8月の37件から再び60件に迫る増加となった。「建設業」の他の中分類が落ち着いた推移を見せる中で、やや特異な傾向を示している。 「卸売業」137件の中分類では「建築材料・家具建具」が6月以降、前年比横ばい~増加の傾向で推移しており、9月は28件(前月比86.7%増、前年同月比100.0%増)急激な伸びを見せた。 |
[05]従業員規模別の動向
~小規模企業倒産が5か月ぶりに前年同月を上回る~ 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産件数は742件(前月比10.6%増、前年同月比2.1%増)で、4月以来5か月ぶりに前年同月を上回った。月次倒産に占める割合は86.7%(前月比1.7ポイント低下、前年同月比0.3ポイント上昇)であった。 小規模企業の倒産件数及び構成比の推移
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[09]倒産原因・営業年数別の動向
~営業年数30年以上の「不況型倒産」割合低下~ 「30年以上」では「不況型倒産」と呼ばれる「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」がいずれも前年同月を下回り、3区分が月次倒産に占める割合は83.0%と前月(85.6%)を2.6ポイント、前年同月(85.2%)を2.2ポイントそれぞれ下回った。 営業年数・倒産原因別件数(負債額1千万円以上)
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減率(負債額1千万円以上)
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減数(負債額1千万円以上)
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