2014年 9月(2014年7月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
在外企業の利益還流がカギ 9月に発表された4~6月期GDP(2次速報)は1次速報から下方修正された。当初想定よりも企業などの設備投資におけるマイナスが大きかったためだという。消費税増税による個人消費の低迷だけでなく、企業の設備投資が足踏みをしていることが示された格好だ。 一方、国際収支統計では経常収支が4,167億円の黒字となった。貿易収支は8,281億円の赤字であるが、国内企業が行った海外投資に対する配当や収益の送金額が大きかったことが黒字の要因となった。 長らく続いた円高によって多くの国内企業は海外に子会社を設立して活動拠点を移し、為替リスクを回避してきた。しかし、為替水準が円安方向に転換した現在でも国内企業による海外企業のM&Aは増加を続けている。 国内市場の縮小が見込まれる中、新興国の旺盛な需要や安い労働力を求めて収益源を海外投資へシフトする動きは依然として活発で、今年7月までのM&A件数は前年同月を8.1%上回る状況であり、その金額は同37.5%増と活況を呈している。つまり企業と資本の海外進出は現在進行形で拡大しているのである。 今後、企業が海外で得た利益を国内に還流させずに現地で再投資する動きが活発化すれば資金が国内への投資や雇用に向かわず、デフレの克服はいっそう困難になることが予想される。ことし1月にオバマ大統領が一般教書演説で米国内への生産回帰に言及したことも、在外企業の利益を国内に還流させ、投資や雇用に向かわせることの難しさを物語っている。 わが国においても内需の拡大に所得増大や雇用の拡充が欠かせないことは同じであり、在外企業の利益を国内への投資や研究開発に向かわせ、最終的には株式配当によって企業収益を家計に取り込む循環が出てくることを期待したい。 建築工事業の倒産が急増 7月の企業倒産は915件(前月比1.7%増、前年同月比14.3%減)、負債総額は1,296億6,100万円(同32.5%減、同35.1%減)と件数は前月比でわずかに増加したものの900件台前半での推移であり、大型倒産の減少に伴う負債額減少の傾向に大きな変化はなかった。 業種別では「飲食業」「その他」を除き前年同月を下回ったが、「建設業」の内訳で「建築工事」が2012年9月以来の高い水準となり今後の推移も注目される。 |
[01]7月の主な動き
(1)倒産件数は低水準で維持も前月比は2か月連続で増加 7月の倒産件数は915件(前月比1.7%増、前年同月比14.3%減)、負債額は1,296億6,100万円(前月比32.5%減、前年同月比35.1%減)で依然として低い水準が続いている。負債額1千万円以上の倒産は882件(前月比2.0%増、前年同月比14.0%減)、負債額は1,294億9,200万円(前月比32.6%減、前年同月比35.1%減)であった。 (2)小規模企業倒産の構成比が高止まり 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は814件(前月比1.2%増、前年同月比14.4%減)で月次倒産全体に占める割合は89.0%(前月比0.3ポイント低下、前年同月比横ばい)と高止まりの様相。 (3)不況型倒産の構成比再び上昇 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は「販売不振」の件数減少が続いており、7月も前年同月比で14.7%の減少となったことで、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」を合計した「不況型倒産」は739件(前月比4.5%増、前年同月比11.7%減)となり、前年同月を下回った。しかし、月次倒産全体に占める割合は83.8%と前月の81.7%から2.1ポイントの上昇(前年同月からも2.1ポイント上昇)した。 (4)建設業が再び前年比減少も建築工事業が増加傾向 6月に2012年2月以来28か月ぶりに前年同月を上回った「建設業」は、再び16.2%減となり、増加は連続しなかった。しかし、件数自体は196件と前月を上回り、過去12か月の平均(180.7件)も超える高い水準となった。「建設業」の内訳では「土木工事」「職別工事」「設備工事」がともに前年同月を30%前後下回る水準であるのに対し、「建築工事」は66件(前月比15.8%増、前年同月比40.4%)と6月同様に高い伸びを示した。 |
[03]業種別の動向
~建築工事業が高水準で推移~ 「飲食業」65件は1月~4月までの水準よりもやや落ち着いてはいるものの、依然として60件を上回る水準が続いた。 一方、6月に前年比が増加に転じた「建設業」は土木工事43件(前年同月比28.3%減)、職別工事53件(同29.3%減)、設備工事34件(同34.6%)が全体の減少方向に寄与し、再び前年同月比は減少となった。しかし、建築工事66件(同40.4%増)は2月の37件から増加基調が続いていることで、今後の推移が注目される。 製造業、卸売業、小売業、サービス業は品目によるバラつきはあるものの、総じて横ばい、あるいは減少傾向となった。 |
[05]従業員規模別の動向
~「4人以下」は前年同月を下回るも過去平均を上回る~ 「100人以上299人以下」の区分は4か月ぶりに2件以上の件数を記録した。「4人以下」638件は前年同月比では8.2%の減少となったが、過去12か月の平均(588.2件)を大きく上回った。 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産件数は814件(前月比1.2%増、前年同月比14.4%減)で月次倒産に占める割合は89.0%(同0.3ポイント低下、同横ばい)であった。 小規模企業の倒産件数推移(全負債額)
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[07]営業年数別の動向
~「不明」を除く区分すべてで前年同月を下回る~ 前年同月比では営業年数が少ない区分での減少率がやや大きい傾向がみられるが、年数の長短による有意な違いはなかった。ただし、倒産原因との関係では営業年数区分ごとに大きな違いがみられるので、別掲記事も参照されたい。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
~販売不振は営業年数6年以上の区分で減少~ 営業年数ごとの「不況型倒産」(販売不振・既往のシワ寄せ・売掛金等回収難の合計)は営業年数「2年未満」と「不明」が前年同月を上回り、それ以外の区分では前年同月を下回った。「販売不振」の構成比が高いため、ここでも20年以上区分の減少方向への寄与が高い傾向がみられた。 倒産原因・営業年数別倒産件数(負債額1千万円以上)
倒産原因・営業年数別倒産件数 前年同月比増減率(負債額1千万円以上)
倒産原因・営業年数別倒産件数 前年同月比増減数(負債額1千万円以上)
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