2014年 7月(2014年5月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
継続的な賃金の上昇が景気回復のカギ 7月に入り今年も後半に差し掛かった。日本列島に接近、上陸した台風8号は広い範囲に甚大な被害を残した。自然災害などによって被害を受けたインフラの復旧、医療救護活動、日用品の提供にあたるのは周辺地域の民間業者であり、各自治体との間で災害復旧に関する協定を締結している。景気回復による人手不足、資材不足が叫ばれる中にあってもこれらの協定が有効に機能し、災害復旧や救護などに支障が生じる事が無いよう願いたい。 新聞各紙は2014年の民間ボーナス支給額について製造業を中心に増額と報じており、本格的な景気回復の波が訪れることを予感させている。景気ウォッチャー調査は6月の現状判断を「横ばい」を示す50を割る47.7としながらも、先行きについては53.3とし、高い水準で推移している。消費税増税後の反動減による影響が薄れていくことへの期待と、足元の客足回復にあまりスピード感がないことへの不安が現れた格好だ。こんご企業が継続的に賃金上昇を続けて“望ましい形”での物価上昇サイクルを実現させるためには、従業員一人あたりの生産性向上など収益力を上げるための投資や組織の改編など、新たな試みが求められるだろう。 米国経済は強い雇用指標に支えられ、ダウ平均株価は一時最高値を更新し17,000ドル台に達した。FRBが7月9日に発表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によれば金融正常化に向けて出口戦略の具体的な検討に入ったと伝えられ、債券の買入終了時期や金利調整手法についてほぼ合意に達したとみられている。こうした過程でこれまで新興国に流入した資金が徐々に引き上げられる局面も考えられるが、米国の金融緩和縮小は市場関係者にとってすでに織り込み済みであり、それ自体が新興国の通貨に与える影響は限定的とみられる。 一方で親ロシア派との攻防が続くウクライナや戦闘が激化するパレスチナ情勢などによって石油製品の価格は高騰が続き、わが国では庶民の生活と企業の収益を圧迫している。 5月の倒産件数は853件(前月比10.7%減、前年同月比21.0%減)で9か月ぶりに前年同月を上回った4月から一転、再び800件台の水準に戻った。負債額は1,727億3,700万円(前月比22.3%増、前年同月比0.4%減)で、負債額「100億円以上」の倒産件数が4か月ぶりに1件発生した。 |
[01]5月の主な動き
(1)倒産件数は再び減少へ 5月の倒産件数は853件(前月比10.7%減、前年同月比21.0%減)、負債額は1,727億3,700万円(前月比22.3%増、前年同月比0.4%減)で、4月に倒産件数が2013年10月以降で初めて950件を超え9か月ぶりに前年同月を上回ったが、再び100件以上の大幅な減少となった。負債額1千万円以上の倒産は834件(前月比8.8%減、前年同月比20.2%減)、負債額は1,726億4,100万円(前月比22.4%増、前年同月比0.4%減)であった。 (2)小規模企業倒産の構成比がわずかに低下 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は735件(前月比11.7%減、前年同月比23.5%減)で月次倒産全体に占める割合は86.2%(前月比0.9ポイント低下、前年同月比2.8ポイント低下)と4月には6か月ぶりに増加に転じた前年同月比も再び大きく減少した。 (3)不況型倒産の前年同月比も再び減少へ 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は「販売不振」の件数が前年同月比で20.2%の減少となったことで、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」を合計した「不況型倒産」は680件(前月比9.1%減、前年同月比21.2%減)となり、4月は18か月ぶりに前年同月を上回った不況型倒産が再び前年同月を下回った。月次倒産全体に占める割合は81.5%と前月の81.8%から0.3ポイント低下した。 (4)法的倒産の構成比が14か月ぶりの低水準へ 負債額1千万円以上の倒産形態別件数は「銀行取引停止」が前年同月比0.7%増と僅かではあるが19か月ぶりに前年同月を上回ったことで「法的倒産」の構成比は前年同月比3.3ポイント低下の82.4%となり、2013年3月以降でもっとも低い水準まで下がった。 |
[05]従業員規模別の動向
~従業員規模の小さな区分で減少~ 負債額1千万円以上の従業員規模別倒産件数は「30人以上99人以下」と「不明」で前年同月を上回った。 減少した区分では「4人以下」が前年同月の722件から551件(前年同月比171件減、同23.7%減)、「5人以上9人以下」が同177件から141件(同36件減、同20.3%減)と従業員規模の小さな区分での減少がめだった。 これと関連し、「小規模企業」(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の企業倒産も減少しており、倒産件数は735件(前月比11.7%減、前年同月比23.5%減)で、月次倒産全体に占める割合は86.2%(同0.9ポイント低下、同2.8ポイント低下)と2012年11月(84.2%)以来の低い水準となった。 小規模企業倒産件数の推移
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[09]倒産原因・営業年数別の動向
~営業年数の長い区分で「販売不振」減少の影響強まる~ 「販売不振」全体では前年同月比146件減(同20.2%減)で営業年数別にみると「6年未満」(同7件減・同14.0%減)、「10年未満」(同13件減・同15.9%減)、「20年未満」(同22件減・同14.9%減)、「30年未満」(同30件減・同20.8%減)、「30年以上」(同48件減・同23.2%減)と営業年数が長い区分ほど「販売不振」減少の影響が強くなっている。 営業年数・倒産原因別件数(負債額1000万円以上・2014年5月)
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減率(負債額1000万円以上・2014年5月)
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減数(負債額1000万円以上・2014年5月)
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