[00]最近の景気動向と企業倒産

2014/06/13 2:06 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2014/07/13 23:05 に更新しました ]
~人材不足・求人難が表面化~

 内閣府が5月に発表した1~3月期の実質GDP速報値は前期比1.5%増、年率換算で5.9%の増加となった。4月1日の消費税増税前の駆け込み需要が大きく、国内需要の寄与度はプラス1.7ポイントと大きく貢献したが、外需は依然弱くマイナス0.3ポイントとなった。金額ベースでは535兆5,245億円と2008年1-3月期(529億5,456億円)を超える水準に達したものの、名目では486兆5,431億円とリーマン・ショック直後の2008年10-12月期(487兆8,874億円)にも届いていないのが現状だ。

 日本政策金融公庫が発表した5月の中小企業景況調査によれば、中小企業の売上DI(現状)は前月のマイナス11.3からマイナス5.9に改善、今後3か月の売上見通しDIは前月のマイナス13.0からマイナス4.2へと改善した。特に食生活や衣生活関連など消費税増税前の「買いだめ」が生じにくい品目での上昇が目立つ。

 甘利経済財政再生相は消費税増税後の反動減について今のところ想定内との考えを示しているが、その陰には事業者と各自治体による並々ならぬ努力がみえる。増税後に客層の変化を感じて高価格、高品質な商品へと品揃えの構成を変えたり、プライベートブランド商品の本体価格を下げたりするなど、メリハリをつけた価格設定で集客の維持を図る。また、一部の自治体では地域限定の商品券を発行して、地元商店から客離れが生じないよう対策を講じているところもある。

 景気の回復による経済活動の活発化は、低成長が続いた日本の労働市場に再び大きな変化を及ぼそうとしている。東北地方の復興や東京オリンピックに向けた受注を抱える建設業と人材の流動化が起きやすい物流・外食産業などで人手不足が深刻化している。日銀の黒田総裁は4月の消費者物価指数について消費税増税分を除いてもプラス幅が拡大した要因として輸入物価上昇の影響もあるとしつつ労働力需給のひっ迫などが実際の賃金や物価に影響を与えていると指摘した。こういった状況は、人件費と仕入コストの上昇をそのまま販売価格に転嫁できない中小企業の経営を圧迫している。

 世界経済の動向をみると、欧州では5月にEU加盟国で構成されるヨーロッパ議会選挙が行われ、EU統合に懐疑的な極右政党が議席を大幅に伸ばし、今後のEU政策への影響が注目された。極右政党躍進の背景にはユーロ危機などの信用不安を受けて各国が進めた財政緊縮策によって失業率が高止まりしていることや、ECB(欧州中央銀行)による各国への予算監視などに対する反発もあると報じられており、過度に保守的な方針に転換されるようであれば、現在我が国と交渉が進められている日EU・EPAを含めたEU政策にも影響が及ぶこととなるだろう。

 米国の4月消費者物価指数は前年比2.0%増、エネルギーと食料品を除くコア指数が同1.8%増で、8か月ぶりの高い上昇率を示した。4月までの雇用統計を見る限りでは失業率は順調に低下している。このまま物価上昇と失業率の低下が続けばFRB(米連邦準備制度理事会)は年内にも資産の買い入れを終了するものとみられている。これまで行われてきた3回の量的緩和によって数兆ドル規模に膨張したバランスシートを、本来の正常な水準に戻す段階に来ているのであるが、そのかじ取りは容易ではない。実効的な財政政策の実現に着手すると同時に中央銀行に対する過度な期待を改める必要があるだろう。

 アジア経済に目を向けると、中国の4月製造業PMIは前月の50.4から50.8へと上昇、HSBCマークイット発表の製造業PMIも前月の48.1から49.4へと上昇し、景気の急減速に歯止めがかかる兆しをみせた。中国政府が大型の景気刺激策に頼ることなく雇用拡大に必要な成長率を維持するためには、これまでのような不動産セクターへの過剰な資金流入を制限し、実体経済を担う産業により多くの資金供給を行うことが必要だろう。

 4月の倒産件数は955件(前月比12.6%増、前年同月比2.2%増)で9か月ぶりに前年同月を上回った。負債額は1,412億7,500万円(前月比20.6%増、前年同月比79.4%減)で、負債額「100億円以上」の倒産件数が3か月連続で0件となった。 東京商工リサーチの発表によると、「中小企業金融円滑化法」に基づく貸付条件変更後の倒産は25件と低い水準を保っている。
※2014/7/14 4月の「中小企業金融円滑化法」に基づく貸し付け条件変更後の倒産件数を訂正致しました。