2014年 5月(2014年3月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
増税の影響は今後の所得次第 4月の消費税増税から1か月が経過した。事前の予想どおり自動車販売台数は前年同月比11.4%の減少であった。3月の同14.5%増から実に25.9ポイントの低下であるが、各社の報道によれば増税後の自動車、小売業界の売り上げ減少は想定内で、今後は徐々に売り上げを戻すだろうとの見方である。 それでは、これまでの個人消費はどうであろうか。消費税増税後初めて迎えた大型連休で国内の主要な観光地を訪れる人は例年並み、あるいはそれ以上と報じられている。もっとも今年のゴールデンウィークが飛び石連休で長期間の旅行に向かないことや、外国人観光客の増加などが後押ししている側面もあるが、過度な消費抑制の動きはみられず、国民の景気回復への期待感を表すものといえるだろう。 みずほ総合研究所の試算によると、4月に総務省が発表した東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の消費税課税対象品目の前年比は3月の0.9%増に対し4月は3.9%増であり、全体としては消費税増税分がそのまま物価に上乗せされた形である。ただし詳細に見ると販売価格の端数調整や調達コストの上昇による値上げ、あるいは増税前の駆け込み需要の反動減からくる値下げも混在し、品目別にはかなりのバラつきがある。 4月の景気ウォッチャー調査は現状判断の分かれ目である50を上回る57.9を示したが、先行き判断については34.7と悲観的な見通しを示した。公立高校の授業料支援制度改正や高齢者の医療費負担増、高速道路の割引制度廃止、さらには消費税増税が経過的に適用される公共料金の値上がりによる生活費・教育費の上昇がこれ以上消費マインドを冷やさないよう願いたい。増税がもたらす景気への影響は未だ不透明だが、労働者の可処分所得が今のままでは購買意欲の低下は避けられないだろう。今後の中期的な所得や雇用情勢の動向が明暗を分けそうだ。 2月の経常収支は4か月続いた赤字を脱し6,127億円の黒字を計上した。鉱物性燃料や自動車を中心に輸出が増加し、貿易収支の赤字幅が縮小したことが大きな要因だ。国内消費の減少が一時的にでも見込まれる中で景気回復の切り札が輸出の拡大であるとすれば、新興国経済の減速が日本経済にもマイナスの影響を及ぼすことは避けられない状況である。 海外の動向に目を向けると、中国の国家統計局が発表した4月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は景気判断の分かれ目である50を上回る50.4となり3月の50.3をわずかに上回った。一方で英マークイットが発表した4月のHSBC中国製造業PMIは48.1で3月の48.0をわずかに上回るものの景気の減速は明白となった。その背景には、政府による過剰生産能力の削減政策や環境基準の強化といった形で従来の高成長戦略から持続性重視への転換の動きが生産能力の低下を招いている一面もあり、さらには資金調達コストの上昇が足かせとなっている。 米国の個人所得や個人支出は順調な回復を示し、4月の雇用統計もおおむね改善している。しかし失業率が依然として高い水準にあることや平均賃金、住宅着工件数の伸び悩みもみられ、すべてが順風満帆とはいかないようだ。イエレンFRB議長は今後の金融緩和縮小について労働市場の改善が続く限り継続し、金利の正常化には時間がかかるとの見解を示している。 EUは米国と同調しながらウクライナ南部クリミア自治共和国を実効支配するロシアに対する段階的な制裁措置を行っている。しかし、EU全体で消費するLNGの約30%がロシアからの輸入であり、そのうち60%がウクライナを通るパイプラインからの供給である欧州諸国にとって複雑に利害が絡み合う問題でもあることから、EU-ロシア間、またロシア-ウクライナ間の対立が決定的となった場合には経済に深刻な影響を及ぼすこととなろう。 3月の企業倒産は848件(前月比5.0%増、前年同月比11.9%減)で前年同月比は8か月連続の減少となった。負債額は1,171億4,300万円(前月比0.7%増、前年同月比26.5%減)と前年同月比で大幅に減少した。特に負債規模10億円以上の2区分は件数ベースで前年同月比46.9%減、負債額は同32.3%減となった。 また、2013年度(平成25年度)の倒産件数は10,956件(前年度比9.5%減)、負債額は2兆7,771億7,000万円(同9.8%減)であった。年度集計の詳細については別資料で公表する。 |
[01]3月の主な動き
(1)倒産件数は8か月連続で1000件を下回る 3月の倒産件数は848件(前月比5.0%増、前年同月比 ※2014/05/08訂正 3月倒産件数の前年同月比を訂正しました。 (2)小規模企業倒産が高い水準で推移 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産は750件(前月比5.9%増、前年同月比10.2%減)で月次倒産全体に占める割合は88.4%(前月比0.8ポイント上昇、前年同月比1.7ポイント上昇)と高い水準が続いている。 (3)不況型倒産の構成比は再び80%超へ 負債額1千万円以上の原因別倒産件数は前月と比べ「販売不振」の件数が9.3%増加したことで構成比も0.9ポイント上昇し、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」を合計した「不況型倒産」は654件で前月比7.2%増、前年同月比13.2%減となり、月次倒産全体に占める割合は80.3%と前月の78.0%から2.3ポイント上昇し、再び80%を超えた。 (4)法的倒産の構成比は前月に比べやや低下 負債額1千万円以上の倒産形態別件数は「銀行取引停止」が前年同月比29.0%減となったことで「法的倒産」の構成比は3.9ポイント上昇の84.4%となったが、2013年9月以降続いていた85%を超える水準からわずかに減少に転じた。前月比では2.7ポイントの低下となった。 (図1) (図2) |
[02]負債規模別の動向
~「100億円以上」の倒産発生なく、小規模倒産の構成比上昇~ 月次倒産に占める割合をみると、「1000万円未満」が前年同月比0.5ポイント上昇の4.0%、「1000万円以上5000万円未満」が同5.1ポイント上昇の50.6%となり、他の区分と比べ負債規模が小さい2区分の構成比が上昇した。 3月は「100億円以上」の倒産はなく、それ以下の負債額上位5社は、レオアセットマネジメント(株)(負債額65億4,800万円、経営コンサルタント業、特別清算、東京都)、(株)ネクスト(負債額48億1,500万円、ボウリング場経営、再生手続、大阪府)、ミナトホテルマネジメント(株)(負債額38億800万円、経営コンサルタント業、特別清算、東京都)、松久(株)(負債額37億円、不動産管理業、破産、岐阜県)、(株)第一繊維(負債額30億円、成人男子・少年服製造業、特別清算、埼玉県)。レオアセットマネジメント(株)とミナトホテルマネジメント(株)は旧日本振興銀行関連の倒産。 |
[04]原因別の動向
~「販売不振」減少傾向も前月比では不況型倒産増加~ |
[05]従業員規模別の動向
~規模の大きさに比例した減少傾向に~ 負債額1千万円以上の従業員規模別件数は、「30人以上99人以下」で前年同月を上回り、「300人以上」は前年同月同様に倒産の発生がなく、その他の区分では前年同月を下回った。 唯一前年同月を上回った「30人以上99人以下」では前年同月(23件)から2件増加の25件であり、全体的には従業員規模の大きさに比例して減少率が高い傾向となった。 小規模企業「商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下」の倒産件数は750件(前月比5.9%増、前年同月比10.2%減)となり全体的な倒産件数の減少を反映しているものの、月次倒産に占める割合は88.4%(前月比0.8ポイント上昇、前年同月比1.7ポイント上昇)で、いぜん倒産の中心は小規模企業である。 負債額1千万円未満の集計では「4人以下」が全体の94.1%を占め、前月(100%)、前年同月(97.1%)より低下しているとはいえ、高い水準を保っている。 (図1) (図2) (表1) |
[06]資本金規模別の動向
~資本金規模に比例した減少傾向、1億円未満の構成比は2000年3月以来の高水準~ 「個人」と資本金5000万円未満の3区分は前年同月を下回っているが、前月比では増加している。対照的に1億円以上の3区分は前月比、前年同月比ともに減少(または発生なし)であった。 資本金1億円未満の倒産件数は810件で、月次倒産に占める割合は99.5%(前月比0.9ポイント上昇、前年同月比0.8ポイント上昇)となり2000年3月(99.5%)以来の高い水準となった。 負債額1千万円未満の集計では「個人」が9件(前月比12.5%増、前年同月比12.5%増)、「1000万円未満」25件(同38.9%増、同3.8%減)であった。 |
[07]営業年数別の動向
~営業年数20年以上の区分で減少傾向が顕著~ |
[08]倒産形態別の動向
~「銀行取引停止」は引き続き低い水準で推移~ 2月に集計開始以来の最少件数となった「銀行取引停止」はその後も急激に増加することなく3月は110件(前月比19.6%増、前年同月比29.0%減)であった。「破産」は636件(前月比0.8%減、前年同月比7.4%減)で月次倒産に占める構成比は前月比3.9ポイント低下、前年同月比4.2ポイント増の78.1%となった。 「破産」など法的倒産の件数は687件で、月次倒産に占める割合は84.4%(前月比2.7ポイント低下、前年同月比3.9ポイント上昇)、また法的倒産に占める「破産」の割合は92.6%(同1.5ポイント低下、同0.8ポイント上昇)であった。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
~業歴の長い営業年数区分で「販売不振」「既往のシワ寄せ」減少~ 営業年数・倒産原因別件数
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減率
営業年数・倒産原因別件数前年同月比増減数(単位:件)
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