[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/06/20 17:20 に Matsumoto Norikazu が投稿

景気回復の基調に変化なし 

 5月の先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、日本から今回の金融政策について「デフレ克服のためで、円安が目的ではない」と説明したことで、とくに円安批判は出なかった。だが内実は、成長優先派と財政再建派の思惑がからみ、会議として一定の方向性を打ち出すのは難かしかったようである。

 円安批判のなかったことで、日本の株式市場には安心感が広がり、一時は平均株価がほぼ5年前の水準に戻るなど、景気の「気」は高揚していた。ところが株式市場は、5月第三週に大暴落した。市場には、これまでの急ピッチな上げに対する警戒感が広がっていた矢先、中国の景況感悪化が伝えられ、長期金利の上昇、円安一服の動きなど、いくつかのマイナス要素に過剰反応した格好である。その後も株式市場は、乱高下を繰り返している。

 5月の株価大暴落については、いわば短期間で急騰したことの調整で、早晩、市場は冷静さを取り戻すとの見方は少なくない。それにしても、はたして景気の「気」が実体経済に落とし込まれるのだろうかとの疑念は、なかなか拭えない。

 現状が持続的な成長につながるかどうかは、政府が6月にまとめる成長戦略の実践、あるいは長期金利のコントロール、雇用・賃金の改善がどのように進められるかにかかっている。成長戦略では、日本産業の再興、戦略市場の創造、国際展開の三プランを柱に据え、今後これらを具体化させるスケジュール作成と政策成果の指標化を考えているようだ。なかで一段の規制緩和に寄せる期待は大きい。景気を三段跳びに例えるなら、いまはホップの段階に過ぎず、肝心のステップ、ジャンプまでの流れを完成させる成長戦略の展開は、これからが本番である。

 いま世界的に、景気の回復期待が高まっている。支えは米国の景気回復である。NY株式市場では、住宅関連の指標や雇用統計の改善、主要企業の業績好転などを好感して、着実な上昇カーブを描いている。欧州でもECB(欧州中央銀行)が利下げに踏み切ったことで、これまでの金融・財政不安がいくらか和らいでいる。そうした事情の中で、世界では日本の景気回復や企業業績の収益性にもっとも勢いがあるとみている。となると、日本は世界景気を上向かせる大きな動力源ということになり、世界もそこに期待を寄せている。G7で円安批判がなかったのは、その期待感からだろう。その半面、日・米・欧の金融緩和に対する新興国の警戒感は強まっている。すでに、韓国、オーストラリア、インドなど多くの国が利下げを実施、世界的に通貨安競争の様相がみられるのは、先行きの懸念材料である。

 最近の国内景気指標では、4月の鉱工業生産指数が先行きの景況判断で「緩やかな持ち直しの動きがみられる」と据え置き、5月の月例経済報告も総合判断で「緩やかに持ち直し」と、2か月ぶりに上方修正した。判断のもとに、海外経済の底固さを反映した生産・輸出と個人消費の持ち直しがある。設備投資は、下げ止まっているものの回復が鈍い。1~3月期の実質GDP(国民総生産)成長率は、年率3.5%の高い伸びを示した。堅調な個人消費と輸出の持ち直しが寄与しており、引き続き4~6月期もプラス成長が見込まれている。一方で、雇用改善の遅れや賃上げに消極的な企業姿勢などが、景気回復への弾みをそいでいる。

 日銀は5月の金融政策決定会合で、4月実施の「量的・質的金融緩和」が市場を動揺させた可能性や、実体経済の好転を示唆している可能性、あるいは緩和策の継続期間やインフレ目標の達成などを巡りさまざまな議論が交わされた。

 企業の3月期決算では、円安効果が明暗二分化された。自動車など輸出企業の大半が大幅な収益改善の一方、原材料を輸入に頼る企業群は暗を引きずっている。もっとも全体で見れば、政府・日銀の経済・金融政策で、経営環境は大幅に好転、今後の見通しも明るい。円安が業績に寄与した企業グループが、こんご株高などによる資産効果をいかに賃上げや設備投資に向けるかに注目したい。ただ、株高を背景にした業績好転に持続性の根拠は乏しく、やはり収益の確保では自律的な企業努力を前提にしなければならないのはもちろんである。

 財務省発表の2012年度経常黒字は、4兆2,931億円(前年度比43.6%減)で1985年以降の最低額を記録した。2013年4月の貿易収支は8,799億円と10か月連続の赤字となった。いずれも、LNG(液化天然ガス)燃料の輸入コストなどが大きな負担となっている。

 2014年4月からの消費税増税の実施が視野に入ってきた。消費税増税は、景気へのインパクトがきわめて大きい。住宅の駆け込み需要が増えているのは、その反映である。

 4月期の倒産件数は、934件(前年同月比10.2%減)と前年比で6か月連続の減少、さらに4月としては22年ぶりに1,000件の大台を割りこんだ。その一方で、このところ前年比で減少傾向にあった負債額が、6,861億8,800万円(同199.4%増)と5か月ぶりの大幅増に転じた。これは、負債額「5千億円以上」の大型倒産が1件発生したことによる。

 負債額「1千万円以上」でみると、899件(同10.5%減)、負債額6,859億8,700万円(同199.6%増)である。  負債額「1億円未満」の小規模倒産は650件(同10.1%減)と前年に比べ減少したものの、構成比は69.6%と、いぜん高水準にある。従業員数9人以下の小規模倒産は761件(同19.1%増)で、構成比は前年を20.1ポイント上回る81.5%に上昇した。