[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/05/17 2:02 に Matsumoto Norikazu が投稿

上向きはじめた景気 
 日銀が4月の金融政策決定会合で、ダイナミックな「量的・質的緩和」を決めた。要は、金融政策の重点を金利操作からマネーの供給量にシフトさせたことにある。長期国債やリスク資産の買い入れを増やし、2年程度で物価上昇率2%の達成を目指す。金融緩和だけで2%のインフレ目標を達成するのはきわめて難しいが、これまでのところ市場は予想を超えた緩和策を好感、一気に円安・株高が進んだ。株価は、日経平均で一時4年11か月ぶりに、リーマン・ショック以前の1万4千円台を回復した。安部政権の積極的な経済政策や、日銀の大胆な金融緩和に対する期待の強さが続いている。だからといって、実体経済が株高で囃されるほど上向いているわけではないが、これら政策発動をきっかけに景気が上向きはじめたのも事実だ。 

 4月に開かれた20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議では、日本の金融緩和はデフレ脱却を目的にしたもので円安誘導が主目的ではないとの説明に、ひとまず会議での理解が得られた。「成長の弱すぎる」世界経済のけん引役として、日本に期待をかけているからだろう。今後、日本の成長戦略に期待圧力が高まることは十分に予想される。

 IMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事も、日銀の金融緩和を「前向きな一歩」と評価している。事実、同基金は4月の世界経済見通しで、日本の実質成長率を13年は1.6%、14年は1.4%と、いずれも前回から上方修正している。ただ中期的な視点では、公的債務を引き下げていく明確な計画と経済加速のための包括的な構造改革の必要性に言及している。OECD(経済開発協力機構)が3月に発表した世界経済短期予測でも、多くの国で「経済活動は上向き」と見ている。2013年1~3月期の主要国GDP(年率換算)は、米国3.5%、日本3.2%、独・仏・伊3か国は0.4%、さらに4~6月期は米国2.0%、日本2.2%、独・仏・伊3か国は1.0%と見通している。

 国内の指標では、4月の月例経済報告が「消費」「輸出」の項目を上方修正する中で、景気判断は「一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる」と前回に据え置いた。日銀の3月短観(企業短期経済観測調査)は、「大企業・製造業」の業況判断指数(DI)が3四半期ぶりに改善したことを伝えた。いずれも、先行きの明るさに期待をつないでいる。

 輸出企業の生産が徐々に回復しており、3月期決算発表では、製造業中心に主要企業の13年度収益が大幅に伸びた。今後、企業の業績向上と、それに伴う賃金の上昇、個人消費の改善といった好循環に入れれば、デフレ脱却のスタートが切れる。もっとも円安の恩恵が行き渡らず、むしろ輸入原材料の値上がりで苦境に追い込まれている中小企業が少なくないのも現実である。しかし全般的にみれば、企業業績はまだら模様の中で緩やかな回復過程をたどるとみられる。

 日本経済がデフレから脱け出すには、ともかく需要不足を解消することだ。それには、もろもろの規制緩和をはじめ、新産業の育成、海外需要の拡大など、いわゆる成長戦略を現実化していくための地固めが必要だ。その結果を景気・雇用の改善につなげ、いわゆる「いい物価上昇」を実現できればいうことない。

 今後、対処を迫られる懸念材料は多い。好景気に浮かれて財政再建への取り組みを疎かにできないのはいうまでもない。円安の負の面にも目配りが必要だろう。電気料金、石油製品のほか原材料を輸入に頼る食品類など、日常生活に直結する分野で値上げが相次いでいる。来年4月に導入予定の消費税増税は、実施前の駆け込み需要が起きる半面、先行き家計への圧迫が強まり景気の下押し要因ともなりかねない。

 海外動向では、米国が好調な企業業績、市場の予想を上回る雇用統計の改善、長らく低迷していた住宅市場に復活の動きが明らかになるなどの一方、シェール革命も材料に加わり、経済は活気を取り戻している。先行きの景気好転を見越したNY株式市場は、次々と史上最高値を更新している。米・株式市場では、外国人投資家の動きに左右されがちな日本市場と違って、上場株の4割を個人株主が占めるといわれるだけに、株価上昇は個人消費の刺激効果が大きい。FRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和の出口を探りはじめている。

 EU(欧州連合)は、キプロスの金融不安、スベロニアの財政不安も加わり、景気減速が避けられそうにない。混迷を深めたイタリア政局は、ナポリターノ大統領がレッタ氏を首相に指名、ようやく左右両派の大連立内閣が発足した。これらEUの動きに、いまのところ米経済の回復を妨げるほどの影響力はなさそうだ。中国は、このところ景気回復に足踏み感がうかがえ、世界経済への不透明感を加えている。 

 3月期単月の倒産件数は、963件(前年同月比19.2%減)と5か月連続で前年同月を下回り、さらに3月としては22年ぶりに1,000件の大台を割り込んだ。負債額も1,592億7.900万円(同52.3%減)と4か月連続で前年を下回った。負債額「100億円以上」の倒産が発生しなかったことが大きな原因だ。このうち負債額「1千万円以上」の件数は929件(同20.0%減)、負債額は1,591億1,000万円(同52.4%減)だった。 

 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業・その他は同20人以下)の倒産は835件(同11.9%増)、構成比は前年を24.1ポイント上回る86.7%と、いぜん高水準である。