2013年 5月(2013年3月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
上向きはじめた景気 3月期単月の倒産件数は、963件(前年同月比19.2%減)と5か月連続で前年同月を下回り、さらに3月としては22年ぶりに1,000件の大台を割り込んだ。負債額も1,592億7.900万円(同52.3%減)と4か月連続で前年を下回った。負債額「100億円以上」の倒産が発生しなかったことが大きな原因だ。このうち負債額「1千万円以上」の件数は929件(同20.0%減)、負債額は1,591億1,000万円(同52.4%減)だった。 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業・その他は同20人以下)の倒産は835件(同11.9%増)、構成比は前年を24.1ポイント上回る86.7%と、いぜん高水準である。 |
[01]企業倒産・2012年度の主な動き
ここで2012年度(12年4月~13年3月)倒産動向の概要を述べ、3月期単月の動向は次項以降の各論で詳細を記述する。12年度の倒産件数は12,100件(前年度比8.2%減)、負債額は3兆775億4,700万円(同22.9%減)だった。これは9,172件の発生に止まった1990年(平成2年)の以来22年ぶりの低水準である。 (1)小規模企業の倒産件数は前年度比7.0%増の8,896件 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業・その他は同20人以下)の倒産件数は8,896件(同7.0%増)で、構成比は前年度を10.4ポイント上回る73.5%だった。 (2)資本金「1億円未満」の企業倒産は8,466件 資本金「1億円未満」事業所の倒産は11,956件(同8.0%減)、構成比は前年度を0.2%上回る98.8%。従業員規模別では、「9人以下」事業所の倒産件数が8,466件(同8.2%増)、構成比は前年度から10.7ポイント上昇の70.0%に上ったが、これは、前年同月から10.8ポイント低下した「不明」がほぼそのまま「4人以下」に移動する格好で同区分が10.7ポイントの上昇となったことによるものである。 (3)不況型倒産は9,917件、法的倒産は10,052件 「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産は9,917件(同8.1%減)で、構成比は前年度を0.2ポイント上回る82.0%だった。不況型倒産全体では、前年比で減少したにも関わらず構成比が上昇したのは、「既往のシワ寄せ」1,400件(同24.1%増)の大幅増が原因している。「破産」「再生手続」「特別清算」「会社更生法」など法的倒産は10,052件(同7.1%減)で、構成比は前年度を1.0ポイント上回る83.1%である。 (4)震災関連の倒産は441件 東京商工リサーチの発表によると、東日本大震災の関連倒産は年度累計441件(前年度685件)、上場企業の倒産は6件(同4件)、円高倒産は60件(同67件)、第三セクター倒産は14件(同26件)だった。 ※後日図表追加します。 |
[02]負債規模別の動向
~負債額「1億円未満」の企業倒産は前年比19.2%減~ 3月期の倒産件数は963件(前年同月比19.2%減)で、負債規模別の内訳をみると「1,000万円未満」が34件(同9.7%増)と「10億円以上100億円未満」32件(同18.5%増)を除き、そのほか区分は前年比で減少した。「1千万円以上5千万円未満」438件(同23.3%減)、「5千万円以上1億円未満」193件(同12.7%減)、「1億円以上5億円未満」232件(同20.8%減)、「5億円以上10億円未満」34件(同20.9%減)である。負債規模「1億円未満」の小規模倒産は665件(同19.2%減)、構成比は前年同月を0.1%ポイント上回る69.1%である。 負債総額は、1,592億7,900万円(同52.3%減)と前年比で大幅減となった。これは、「100億円以上」の倒産発生が2012年9月以来のゼロだったことが影響している。区分別の動向をみると、「1千万円未満」の1億6,900万円(同35.2%増)を除き、そのほか区分はすべて前年比で減少した。「1千万円以上5千万円未満」89億4,200万円(同20.7%減)、「5千万円以上1億円未満」133億7,100万円(同11.1%減)、「1億円以上5億円未満」488億600万円(同17.3%減)、「5億円以上10億円未満」237億4,000万円(同19.0%減)、「10億円以上100億円未満」642億5,100万円(同7.0%減)である。 |
[03]業種別の動向
~「製造業」は前年比で1年1か月連続の減少~ 負債額「1千万円以上」の業種別倒産件数は、「製造業」が163件(前年同月比1.9%増)と前年比増となったのを除き、そのほか区分はすべて減少した。「建設業」が216件(同26.0%減)と1年1か月連続の減少、「飲食業」が45件(同39.2%減)と2007年9月(37件)以来の低水準となったほか、「卸売業」126件(同25.4%減)、「小売業」116件(同7.9%減)、「サービス業」188件(同24.8%減)、「その他」75件(同16.7%減)なども減少した。 前年に比べた構成比は、「建設業」(25.2%→23.3%)、「卸売業」(14.6%→13.6%)、「飲食業」(6.4%→4.8%)、「サービス業」(同21.5%→20.2%)の4区分が低下、「製造業」(13.8%→17.5%)、「小売業」(10.9%→12.5%)、「その他」(7.8%→8.1%)の3区分は上昇した。 負債額は、「サービス業」が396億3,000万円(同3.0%増)となったのを除き、そのほか区分はすべて前年比で減少した。「建設業」222億1,600万円(同40.4%減)、「製造業」426億9,300万円(同74.2%減)、「卸売業」258億6,500万円(同10.9%減)、「小売業」105億7,200万円(同27.3%減)、「飲食業」16億4,800万円(同69.1%減)、「その他」164億8,600万円(同62.6%減)である。 |
[04]原因別の動向
~不況型倒産の構成比は前年を1.2ポイント上回る81.2%~ 負債額「1千万円以上」の原因別倒産件数は、「販売不振」が625件(前年同月比23.5%減)と5か月連続で減少、「放漫経営」35件(同46.2%減)、「他社倒産の余波」58件(同6.5%減)、「過少資本」40件(同39.4%減)もそれぞれ減少、ほかは「既往のシワ寄せ」119件(同11.2%増)が9か月連続の増加となったのをはじめ、「売掛金回収難」10件(同100.0%増)、「その他」42件(同7.7%増)なども増加した。 前年に比べた構成比は、「販売不振」(70.4%→67.3%)、「放漫経営」(5.6%→3.8%)、「過少資本」(5.7%→4.3%)の3区分が低下、「他社倒産の余波」(5.3%→6.2%)、「既往のシワ寄せ」(9.2%→12.8%)、「売掛金回収難」(0.4%→1.1%)、「その他」(3.4%→4.5%)の4区分は上昇した。「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産は754件(同18.8%減)と減少したが、構成比は81.2%と前年を1.2ポイント上回った。 負債額は、「販売不振」803億3,300万円(同39.0%減)、「放漫経営」124億1,400万円(同37.4%減)、「他社倒産の余波」106億600万円(同92.3%減)、「過少資本」42億4,200万円(同65.5%減)の4区分が、いずれも前年比で二桁の減少率となった。「既往のシワ寄せ」356億4,000万円(同61.4%増)、「売掛金回収難」25億7,800万円(同3.0%増)、「その他」132億9,700万円(同93.2%増)の3区分は増加した。 |
[05]従業員規模別の動向
~「9人以下」事業所の構成比が前年比で23.7ポイント上昇~ 負債額「1千万円以上」の従業員規模別倒産件数は、「4人以下」が608件(前年同月比22.6%増)と、前年比で9か月連続の増加となった。とくに昨年9月以降は12月の582件を除き、各月600件の大台が続いている。これは「不明」が前年の290件から9件(同96.9%減)へ激減、この区分から「4人以下」への移行がさらに進んだ結果とみられる。「100人以上299人以下」4件(同300.0%増)も増加した。ほかは「5人以上9人以下」172件(同15.7%減)、「10人以上29人以下」113件(同16.3%減)、「30人以上99人以下」23件(同30.3%減)など、いずれも減少した。 前年に比べた構成比は、「4人以下」(42.7%→65.4%)、「5人以上9人以下」(17.6%→18.5%)、「10人以上29人以下」(11.6%→12.2%)、「100人以上299人以下」(0.1%→0.4%)の4区分が上昇、「30人以上99人以下」(2.8%→2.5%)、「300人以上」(0.2%→0.0%)、「不明」(25.0%→1.0%)の3区分は低下した。従業員数「9人以下」の小規模倒産は780件(同11.4%増)、構成比も前年を23.7ポイント上回る84.0%と大幅に上昇した。「不明」区分の減少と「4人以下」事業所増加の相乗作用が映し出されている。 負債額は、「100人以上299人以下」の144億5,200万円(同288.6%増)を除き、ほかの区分はいずれも前年比で減少した。「4人以下」521億4,300万円(同14.9%減)、「5人以上9人以下」242億5,900万円(同37.5%減)、「10人以上29人以下」411億2,800万円(59.3%減)、「30人以上99人以下」238億3,500万円(同72.0%減)、「不明」32億9,300万円(同80.3%減)である。 |
[06]資本金規模別の動向
~「個人」と資本金「1億円未満」事業所の倒産件数は前年比19.8%減~ 負債額「1千万円以上」の資本金規模別倒産件数は、「10億円以上」の2件(前年同月比100.0%増)を除き、そのほか区分は「個人」144件(同24.2%減)、「1千万円未満」361件(同12.6%減)、「1千万円以上5千万円未満」381件(同24.4%減)、「5千万円以上1億円未満」31件(同13.9%減)、「1億円以上5億円未満」10件(同41.2%減)と、いずれも前年に比べ二桁の減少率となった。 前年に比べた構成比は、「個人」(16.4%→15.5%)、「1千万円以上5千万円未満」(43.4%→41.0%)、「1億円以上5億円未満」(1.5%→1.1%)の3区分が低下、「1千万円未満」(35.6%→38.9%)、「5千万円以上1億円未満」(3.1%→3.3%)、「10億円以上」(0.1%→0.2%)の3区分は上昇した。「個人」含む資本金「1億円未満」の小規模倒産は、917件(同19.8%減)で、構成比は前年を0.3ポイント上回る98.7%である。 負債額は、「1千万円以上5千万円未満」が840億4,400万円(同67.6%減)と大幅に減少したほか、「個人」39億3,500万円(同8.6%減)、「5千万円以上1億円未満」189億4,900万円(同6.3%減)も減少、一方、「1千万円未満」296億300万円(同1.5%増)、「1億円以上5億円未満」149億5,600万円(同2.9%増)、「10億円以上」76億2,300万円(同15.3%増)などは増加した。 |
[07]営業年数別の動向
~「2年以上6年未満」を除く区分の件数はすべて前年比二桁の減少率~ 負債額「1千万円以上」の営業年数別倒産件数は、「2年以上6年未満」が83件(前年同月比8.8%減)と前年比で一桁の減少率だが、1年2か月連続の減少となった。ほかの区分は、すべて二桁の減少率を示した。「2年未満」9件(同43.8%減)、「6年以上10年未満」88件(同27.3%減)、「10年以上20年未満」170件(同30.0%減)、「20年以上30年未満」188件(同14.5%減)、「30年以上」281件(12.5%減)、「不明」110件(同26.2%減)である。 前年に比べた構成比は、「2年未満」(1.4%→1.0%)、「6年以上10年未満」(10.4%→9.5%)、「10年以上20年未満」(20.9%→18.3%)、「不明」(12.8%→11.8%)の4区分が低下、「2年以上6年未満」(7.8%→8.9%)、「20年以上30年未満」(18.9%→20.2%)、「30年以上」(27.6%→30.2%)の3区分は上昇した。 負債額は、「2年以上6年未満」だけが98億4,700万円(同142.2%増)と前年比増となったが、ほかは「2年未満」2億6,900万円(同28.5%減)、「6年以上10年未満」160億1,000万円(同52.7%減)、「10年以上20年未満」270億300万円(16.3%減)、「20年以上30年未満」280億200万円(同30.0%減)、「30年以上」763億900万円(同65.4%減)、「不明」16億7,000万円(同39.8%減)と、いずれも二桁の減少率である。 |
[08]倒産形態別の動向
~法的倒産は前年比21.7%減の748件~ 負債額「1千万円以上」の倒産形態別倒産件数は、「特別清算」の26件(前年同月比13.0%増)と「その他」の26件(同8.3%増)を除き、そのほか区分は前年比で減少した。「銀行取引停止」155件(同14.8%減)、「破産」687件(同21.5%減)、「再生手続」34件(同30.6%減)、「会社更生法」1件(同87.5%減)と、いずれも二桁の減少率である。 前年に比べた構成比は、「銀行取引停止」(15.7%→16.7%)、「特別清算」(2.0%→2.8%)、「その他」(2.1%→2.8%)の3区分が上昇、「破産」(75.4%→74.0%)、「再生手続」(4.2%→3.7%)、「会社更生法」(0.7%→0.1%)の3区分は低下した。 「破産」「再生手続」「特別清算」「会社更生法」など法的倒産は748件(同21.7%減)、構成比は前年を1.8ポイント下回る80.5%だった。また、法的倒産に占める「破産」シェアは、前年を0.2ポイント上回る91.8%である。 負債額は、「銀行取引停止」278億900万円(同10.6%減)、「破産」826億3,400万円(同21.4%減)「再生手続」165億9,500万円(同47.5%減)、「会社更生法」58億円(同96.2%減)の4区分が、いずれも前年比二桁の減少率となった。「特別清算」152億5,600万円(同79.4%増)と「その他」110億1,600万円(同118.7%増)は増加した。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
~「既往のシワ寄せ」では営業年数5区分の負債額が増加~ 負債額「1千万円以上」の集計から倒産原因と営業年数の関連をみると、件数は全49区分のうち増加が15区分、減少が25区分、横ばいが9区分、負債額は増加が20区分、減少が23区分、横ばいが6区分だった。件数で比較的変動の目立った区分は、「過少資本」の「不明」6件(前年同月比200.0%増)、「その他」の「6年以上10年未満」5件(同150.0%増)くらいである。 負債額では、「販売不振」の「2年以上6年未満」45億4,800万円(同190.6%増)、「放漫経営」の「6年以上10年未満」27億2,200万円(同242.0%増)、「不明」6,100万円(同90.5%減)、「他社倒産の余波」の「2年以上6年未満」30億8,800万円(同436.1%増)、「6年以上10年未満」6億2,200万円(同97.4%減)、「30年以上」47億7,500万円(同95.7%減)、「過少資本」の「不明」1億円(同400.0%増)、「既往のシワ寄せ」の「2年以上6年未満」11億3,800万円(同191.0%増)、「6年以上10年未満」30億2,500万円(同171.1%増)、「30年以上」219億1,000万円(同112.8%増)、「その他」の「20年以上30年未満」43億4,700万円(同822.9%増)、「30年以上」57億8,100万円(同132.4%増)などで変動幅の大きさが目立つ。 |
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