2013年12月(2013年10月調査)
[00]最近の景気動向と企業倒産
民需主導の成長へシフトが課題 師走入りである。経済の1年を振り返ると、アベノミクス効果で景気は「持ち直しから回復」へと、着実に歩を進めている。もっとも、大胆な財政出動、異次元の「量的・質的金融緩和」による初期効果が薄れてきたのも事実である。これからの局面は、脱デフレ・成長という目標達成に向かって、実際面で成長戦略の最先端を担う企業が、賃上げ・雇用改善、設備投資をどう進めるかにかかってくる。 上場企業の業績が好調である。2013年度上半期は、円安の追い風を受けて自動車、電機など製造業を中心とした企業の増益率が際立った。2014年3月期も、引き続き大幅な増収益が見込まれている。企業の好業績に加え、円安、世界的な株高の流れを映して、日経平均株価はかつてない高い水準で推移している。株高による資産増大の効果で、個人消費の伸びが見込める状況だ。好業績企業では、企業向け減税制度を利用して、こんご賃上げや設備投資を前向きにとらえようとの意向を示すところが少なくないのは心強い。一方で、原材料を輸入に依存する企業などは、コスト負担が大きく収益を圧迫されている。 景気指標では、7~9月期のGDP(国内総生産)速報値が、物価変動を除いた実質で年率換算1.9%増となった。4四半期連続のプラスである。公共投資の進展と、住宅投資で来年4月からの消費税増税に先立った駆け込み需要が進んだ結果といえる。一方で、輸出はアジア新興国の景気減速で3四半期ぶりのマイナスとなった。こんご、日本経済を持続的な成長につなげるには、財政出動による成長押し上げ効果に頼るのではなく、企業中心の民需主導で所得環境の改善と設備投資の伸びを期待したいところだ。 当面の景気動向は、増税前の駆け込み需要で個人消費が一巡するまでは、プラス成長が見込める。設備投資は、輸出増や消費の盛り上がりに期待をかけるほかなさそうである。 日本政策金融公庫の「中小企業景況調査」によれば、10月期売上げ・先行き売上げ見通しDIはともに上昇、プラス水準が続いている。さらに、「全国中小企業動向調査」では、14年1~3月期についても、「持ち直し」の状況が続くとみている。 海外の動向はどうだろう。米国の7~9月期GDP(国内総生産)速報値は、年率換算で前期比2.8%増となった。この数値は、12年7~9月期以来1年ぶりの高い伸びである。住宅投資の拡大と自動車販売の好調で、内需の底堅い動きが続いている。10月の新車販売台数は、好調を持続しながら前年比10.6%増となった。この結果、2013年の販売台数は、6年ぶりの1,500万台乗せが確実視されている。外需でも中国・EU(欧州連合)の持ち直しが期待できるようになり、景気は回復基調にあるとみていい。とはいえ、10~12月期は成長鈍化の恐れがある。新年度予算案を巡る与野党の対立で、一時的に一部政府機能の停止を余儀なくされたことの影響は免れないだろう。 金融緩和の縮小については、新しくFRB(米連邦準備制度理事会)の次期議長に選任されたイエレン副議長が、上院の公聴会で「経済の強い回復を促すため量的緩和を続ける」として、当面は市場に大量の資金供給を続ける意向を示している。この発言は、金融緩和の出口戦略に課題が残されているとはいえ、当面の世界経済を落ち着かせる効果はある。 一方で、マイナス材料視されるのが、個人消費の鈍さと、財政論議を巡る米議会の迷走である。来年1~2月には、暫定予算編成と政府債務の上限引上げを巡る与野党論戦の再燃と議決の先送りが懸念される。しかし、こうした状況の中でNY株式市場は、ダウ平均の高値を更新し続けている。底堅い景況感と企業業績への期待が、先行きの警戒感を凌いでいるようだ。 ユーロ圏では、7~9月期GDP(域内総生産)が前期比0.1%増(年率換算0.4%増)と2四半期連続のプラス成長が伝えられた。ECB(欧州中央銀行)は11月初旬、圏内適用の政策金利を0.5%から、過去最低の0.24%に引き下げた。圏内の景気が回復基調にあるとはいえ、経済動向はいぜんもろい状態にあると判断、金利面で「緩やかな支援」のメッセージをだしている。政策金利の引下げは、こんごも緩やかな回復を後押しする効果が期待できる。 中国では、11月の製造業購買者景気指数(PMI)が51.4と10月まで4か月連続した上昇の流れが止まった。政府のインフラ整備への期待から、企業心理は上向きであるが、新規受注指数は内外需とも冴えず、景気の先行きを大きく期待できる状況にはない。 10月の倒産件数は988件(前年同月比7.8%減)、負債額は1,554億8,100万円(同35.1%減)である。このうち、負債額「1千万円以上」は、959件(同7.3%減)、負債額は1,553億4,500万円(同35.1%減)である。倒産件数は9月(841件)から17.5%増加したものの、10月の倒産件数としては1991年以降の23年間で最少を記録し、負債額は1990年11月以降の23年間での最少額をそれぞれ記録した。 負債額の前年同月比が大幅に減少した背景には、負債額「100億円以上」の倒産がなく、同「10億円以上」の倒産が22件に止まったことがある。 |
[01]10月の主な動き
(1)小規模企業の倒産構成比は前年を20ポイント上回る88.0% 小規模企業(商業・サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の倒産件数は869件(前月比19.5%増、前年同月比19.2%増)で、月次倒産に占める割合は88.0%(同1.6ポイント上昇、同20.0ポイント上昇)であった。 (2)不況型倒産は前年同月比10.4%減の793件 原因別では、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産が793件(同10.4%減)、構成比は前年を2.3ポイント下回る80.3%である。形態別では、「破産」「再生手続」「特別清算」など法的倒産が851件(同5.1%減)、構成比は前年を2.4ポイント上回る86.1%である。 (3)従業員規模「9人以下」の小規模倒産は前年比18.7%増 従業員規模「9人以下」の小規模倒産は824件(同18.7%増)、構成比は前年を18.7ポイント上回る83.4%である。 (4)東日本大震災関連は前年同月に比べ18か月連続の減少 東京商工リサーチの発表によると、東日本大震災の関連倒産は24件で、18か月連続で前年同月を下回った。金融円滑化法の貸付条件変更後の倒産は51件である。
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[02]負債規模別の動向
10月期の倒産件数を区分別にみると、負債額「1千万円以上5千万円未満」497件(前年同月比2.7%増)を除き、そのほか区分はすべて前年に比べ減少した。「1千万円未満」29件(同21.6%減)、「5千万円以上1億円未満」168件(同15.2%減)、「1億円以上5億円未満」235件(同11.7%減)、「5億円以上10億円未満」37件(同5.1%減)、「10億円以上100億円未満」22件(同53.2%減)である。負債額「1億円未満」の小規模倒産は、694件(同3.5%減)、構成比は前年を3.1ポイント上回る70.2%である。 負債額は、すべての区分で前年に比べ減少した。「1千万円未満」1億3,600万円(同15.5%減)、「1千万円以上5千万円未満」101億6,100万円(同1.6%減)、「5千万円以上1億円未満」112億4,200万円(同15.9%減)、「1億円以上5億円未満」472億5,600万円(同13.6%減)、「5億円以上10億円未満」241億4,200万円(同7.6%減)、「10億円以上100億円未満」625億4,400万円(同38.0%減)である。 |
[03]業種別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数では、「小売業」137件(前年同月比21.2%増)を除く、そのほか区分はすべて前年比で減少した。「建設業」が223件(同7.9%減)と1年8か月連続で前年比減となったのをはじめ、「製造業」155件(同10.4%減)、「卸売業」127件(同20.1%減)、「飲食業」59件(同3.3%減)、「サービス業」177件(同10.6%減)、「その他」81件(同9.0%減)などである。 前年に比べた構成比は、「建設業」(23.4%→23.3%)、「製造業」(16.7%→16.2%)、「卸売業」(15.4%→13.2%)、「サービス業」(19.1%→18.5%)、「その他」(8.6%→8.4%)の5区分が低下、「小売業」(10.9%→14.3%)、「飲食業」(5.9%→6.2%)の2業種は上昇した。 負債額は、「建設業」231億9,900万円(同29.6%減)、「製造業」237億6,900万円(同51.3%減)、「卸売業」262億2,900万円(同15.1%減)、「飲食業」40億4,200万円(同17.4%減)、「サービス業」261億1,700万円(同66.3%減)の5業種が前年比で減少、「小売業」182億3,500万円(同59.3%増)と「その他」337億5,400万円(同2.5%増)の2区分は増加した。 |
[04]原因別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数は、「販売不振」658件(前年同月比8.9%減)、「他社倒産の余波」44件(同18.5%減)、「既往のシワ寄せ」107件(同18.9%減)、「その他」 27件(同3.6%減)の4区分が前年比で減少、「過少資本」67件(同45.7%増)、「売掛金回収難」6件(同100.0%増)の2区分が増加、「放漫経営」は横ばいの50件だった。「販売不振」は、7月の前年同月比0.1%増を挟んで2012年11月からの減少基調が続いている。 前年に比べた構成比は、「販売不振」(69.8%→68.6%)、「他社倒産の余波」(5.2%→4.6%)、「既往のシワ寄せ」(12.8%→11.2%)の3区分が低下、「放漫経営」(4.8%→5.2%)、「過少資本」(4.4%→7.0%)、「売掛金回収難」(0.3%→0.6%)、「その他」(2.7%→2.8%)の4区分は上昇した。「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産は、前年比10.0%減の771件(負債額「1千万円未満」を含め793件)、構成比は前年を2.4ポイント下回る80.4%(同80.3%)である。 負債額は、「販売不振」701億6,100万円(同34.7%減)、「放漫経営」83億7,900万円(同63.0%減)、「他社倒産の余波」75億300万円(同45.7%減)、「既往のシワ寄せ」441億1,200万円(同44.2%減)、「その他」95億4,100万円(同12.2%減)の5区分が前年比減、「過少資本」146億3,600万円(同200.3%増)と「売掛金回収難」10億1,300万円(同83.2%増)の2区分は増加した。 負債額「1千万円未満」の動向は、「販売不振」「放漫経営」「過少資本」3区分では件数・負債額がともに減少、「他社倒産の余波」「既往のシワ寄せ」「その他」の3区分は件数横ばい、負債額増である。 |
[05]従業員規模別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数では、「4人以下」が659件(前年同月比32.6%増)と前年比で1年4か月連続の増加となった。ほかは「5人以上9人以下」136件(同19.5%減)、「10人以上29人以下」130件(同12.2%減)、「30人以上99人以下」26件(同25.7%減)、「不明」5件(同97.3%減)の4区分が減少、「100人以上299人」は3件で前年に横ばい。 前年に比べた構成比は、「4人以下」(48.0%→68.7%)のシェアが大幅に上昇、ほかは「5人以上9人以下」(16.3%→14.2%)、「10人以上29人以下」(14.3%→13.6%)、「30人以上99人以下」(3.4%→2.7%)、「不明」(17.7%→0.5%)が低下、「100人以上299人以下」は横ばいである。「9人以下」事業所の倒産は、前年比19.4%増の795件(負債額「1千万円未満」を含め824件)、構成比は前年同月を18.6ポイント上回る82.9%(同83.4%)である。 負債額は、すべての区分が前年比で減少した。「4人以下」550億3,400万円(同27.7%減)、「5人以上9人以下」224億1,500万円(同31.9%減)、「10人以上29人以下」478億1,900万円(同30.1%減)、「30人以上99人以下」262億3,700万円(同34.0%減)、「100人以上299人以下」33億円(同14.3%減)、「不明」5億4,000万円(同97.1%減)である。 |
[06]資本金規模別の動向
~「個人」件数が前年比15.4%増の165件~ 負債額「1千万円以上」の倒産件数は、「個人」165件(前年同月比15.4%増)と資本金「5億円以上10億円未満」1件を除く、そのほか区分はすべて前年比で減少した。 資本金「1千万円未満」375件(同8.5%減)、同「1千万円以上5千万円未満」392件(同10.7%減)、同「5千万円以上1億円未満」19件(同32.1%減)、同「1億円以上5億円未満」7件(同50.0%減)である。 前年に比べた構成比は、「個人」(13.8%→17.2%)と同「5億円以上10億円未満」(0.0%→0.1%)の2区分が上昇、同「1千万円未満」(39.6%→39.1%)、同「1千万円以上5千万円未満」(42.4%→40.9%)、同「5千万円以上1億円未満」(2.7%→2.0%)、同「1億円以上5億円未満」(1.4%→0.7%)、同「10億円以上」(0.1→0.0%)の5区分は低下した。 「個人」と資本金「1億円未満」企業の倒産は、前年比6.8%減の951件(負債額「1千万円未満」を含め980件)、構成比は前年を0.6ポイント上回る99.2%(同99.2%)である。 負債額も、すべての区分が前年比で減少した。「個人」34億7,300万円(同31.4%減)、同「1千万円未満」224億100万円(同24.1%減)、同「1千万円以上5千万円未満」936億6,600万円(同17.1%減)、同「5千万円以上1億円未満」193億5,500万円(同41.3%減)、同「1億円以上5億円未満」135億900万円(同76.2%減)、同「5億円以上10億円未満」29億4,100万円である。 負債額「1千万円未満」の件数・負債額は、「個人」5件(同37.5%減)、1,500万円(同46.4%減)、同「1千万円未満」24件(17.2%減)、1億2,100万円(同9.0%減)である。 |
[07]営業年数別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数は、「2年未満」8件(前年同月比27.3%減)、「2年以上6年未満」60件(同32.6%減)、「6年以上10年未満」104件(同14.0%減)、「30年以上」261件(同13.3%減)の4区分が、いずれも前年比で二桁の減少率となった。ほかは、「10年以上20年未満」209件(同1.5%増)と「不明」116件(同9.4%増)の2区分が増加、「20年以上30年未満」201件は前年に横ばい。 前年に比べた構成比は、「2年未満」(1.1%→0.8%)、「2年以上6年未満」(8.6%→6.3%)、「6年以上10年未満」(11.7%→10.8%)、「30年以上」(29.1%→27.2%)の4区分が低下、「10年以上20年未満」(19.9%→21.8%)、「20年以上30年未満」(19.4%→21.0%)、「不明」(10.2%→12.1%)の3区分は上昇した。 負債額は、「20年以上30年未満」377億6,600万円(同11.5%増)と「不明」21億6,700万円(同1.1%減)を除き、そのほか区分はいずれも前年比で二桁の減少率である。「2年未満」2億7,700万円(同21.3%減)、「2年以上6年未満」45億3,500万円(同34.2%減)、「6年以上10年未満」60億2,600万円(同87.2%減)、「10年以上20年未満」228億1,800万円(同36.4%減)、「30年以上」817億5,600万円(同27.8%減)である。 |
[08]倒産形態別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数は、「銀行取引停止」が129件(前年同月比19.9%減)と前年比で1年連続の減少となったほか、「破産」764件(同5.7%減)、「その他」7件(同46.2%減)も減少、一方、「再生手続」37件(同19.4%増)は1年1か月ぶりに前年同月を上回った。「特別清算」22件(同10.0%増)も増加した。 前年に比べた構成比は、「破産」(78.3%→79.7%)、「再生手続」(3.0%→3.9%)、「特別清算」(1.9%→2.3%)の3区分が上昇、「銀行取引停止」(15.6%→13.5%)、「その他」(1.3%→0.7%)の2区分は低下した。「破産」「再生手続」「特別清算」など法的倒産は、前年比4.4%減の823件(負債額「1千万円未満」を含め851件)、構成比は前年を2.6ポイント上回る85.8%(同86.1%)である。 負債額は、「銀行取引停止」210億1,200万円(同30.8%減)、「破産」1.019億1,600万円(同28.2%減)、「再生手続」187億9,500万円(同8.0%減)、「特別清算」130億2,600万円(同70.1%減)、「その他」5億9,600万円(同81.1%減)と、すべての区分で前年比減となった。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
負債額「1千万円以上」で倒産原因と営業年数の関連をみると、件数は全49区分のうち増加が19区分、減少が22区分、横ばいが8区分、負債額は増加が24区分、減少が23区分、横ばいが2区分で、前月に比べ件数・負債額ともに増加区分が減少、減少区分が増加している。 件数で、前年に比べ変動幅の大きかった区分は、わずかに「過少資本」の「6年以上10年未満」9件(前年同月比125.0%増)、「不明」6件(同500.0%増)の2区分が目立つていど。負債額では、「他社倒産の余波」の「2年以上6年未満」3,400万円(同94.3%減)、「6年以上10年未満」1億3,300万円(同95.3%減)、「過少資本」の「2年以上6年未満」8億2,800万円(同117.9%増)、「10年以上20年未満」31億5,500万円(同279.7%増)、「20年以上30年未満」16億4,700万円(同133.0%増)、「30年以上」74億200万円(同352.4%増)、「不明」6,000万円(同500.0%増)、「既往のシワ寄せ」の「2年以上6年未満」3,000万円(同98.4%減)、「6年以上10年未満」1億4,900万円(同99.6%減)、「20年以上30年未満」147億1,100万円(同257.7%増)、「その他」の「2年以上6年未満」9億9,000万円(同1423.1%増)などである。 営業年数・倒産原因別の倒産件数(負債額1000万円以上・10月)
営業年数・倒産原因別の倒産件数前年同月比増減率(負債額1000万円以上・10月)
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