[00]最近の景気動向と企業倒産

2014/01/19 17:46 に Matsumoto Norikazu が投稿
消費税増税後の景気冷え込みをどう防ぐ

 年末年始は、1年を振り返り1年の先行きを考える絶好の機会である。昨年を特徴づけたのは、アベノミクスの展開による円安・株高と「2020年東京五輪・パラリンピック」の開催決定である。二つともに景気の刺激効果を十分に発揮、経済の地合いは良好を保ったまま越年した。

 2014年の課題は、アベノミクス第三の矢「成長戦略」のステージをいかに仕上げ、持続させるかにある。テーマは、経済・金融政策で持ち直した経済環境を、引き続き民間主導の成長につなげることと、デフレ脱却にある。昨年、景気回復をけん引してきたのは、大胆な財政出動による公共投資と「量的・質的金融緩和」だが、これら政策はあくまで景気回復の誘い水に過ぎず、効果の永続性は期待できない。要は、企業の賃上げと雇用環境の改善、あるいは設備投資がどれだけ進むかにかかる。

 14年は、4月からの新年度入りと同時に消費税増税が実行段階に入る。増税前の駆け込み需要は、すでに13年後半から顕在化したが、それらが一巡、これから反動として消費動向はしばらくの間、緩慢な状況を余儀なくされるだろう。

 政府は、増税の反動を和らげると同時に景気の腰折れを防ぐため、歳出規模約5.5兆円の25年度補正予算を組んだ。そこには、東京五輪の関連施設建設などの公共事業も含まれる。税制面では、企業の活力を引きだすための法人課税の実効税率を14年度に35%まで引き下げるほか、復興特別法人税の廃止、14年度から2年間にわたり大企業の交際費を50%まで非課税、設備投資や賃金アップを促すための減税、中小企業への融資制度の拡充などの措置がとられる。

 いくつかの景気判断をみてみる。財務省は、13年7~9月期法人企業統計をもとに、「基調として企業収益は改善、設備投資も上向きつつあり、日本経済は足元で緩やかに回復しつつある」との認識を示している。

 11月の景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.2ポイント上昇の109.6だった。2か月連続の改善で、08年7月以来5年3か月ぶり高水準となった。内閣府は、これをもとに基調判断を最上段の「改善を示している」に据え置いた。数か月先の景気動向を示す先行指数も0.7ポイント上昇、2か月連続で改善されている。

 政府は、12月の月例経済報告で、デフレの表現を4年2か月ぶりに削除した。もっとも「デフレ状況ではないということで、デフレ脱却を意味しない」としている。

 12月の日銀短観(企業短期経済観測調査)は、企業規模では大企業から中小企業まで、業態では製造業から非製造業まで、業況の改善を伝えた。とくに注目されるのは、中小企業非製造業の景況感が1992年2月以来約1年ぶりのプラス、製造業も07年12月以来6年ぶりの高水準となったことである。景況感の広がりの背景には、円安に加え、公共工事の進展、底堅い個人消費の推移がある。もっとも、先行き3月にかけては、やや悪化すると見たてている。

 このように、いくつかの景気指標から、年度内の景気動向は総じて持ち直し感を継続するとみていい。円安基調は輸出産業を潤し、株高の資産効果によって個人消費も底堅く推移するものとみられる。地方にも、景況感の改善が徐々に広がっている。

 14年全般については、日本政策金融公庫が中小企業景況調査で、中小企業の業況判断DIを前年比13.0%増と見込んでいる。需要分野別では、設備投資関連、家電関連、食・衣生活関連での上昇が期待される。経営上の不安要素としては、原材料価格、燃料コストの高騰、人材不足・育成難などの割合が増えると見ている。

 海外動向はどうだろう。米FRB(連邦準備制度理事会)は12月、量的緩和の緩やかな縮小開始を決めた。回復基調にある雇用統計、高水準を維持している住宅着工件数、堅調な個人消費などの景気指標が背景にある。世界の株式市場は、緩和縮小を歓迎、日米をはじめ各国の株価は上昇している。

 米連邦政府は、14,15両年度予算の大枠を決めた。歳出の強制削減縮小についても、小幅にとどめることで与・野党の一致がみられ、財政協議の混乱リスクは減った。ただ、債務の上限引上げについては、与・野党の合意が持ち越されており、なおリスク要因として残っている。個別の経済指標では、7~9月期実質GDP(国内総生産)が、年率換算で前期比3.6%増となった。伸び率は4~6月期の2.5%増を上回り、景気回復の足取りは順調である。

11月の雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比で増加、失業率は7.0%に低下、08年11月以来5年ぶりの水準まで改善した。底堅い景気回復を裏づけた格好である。

 ユーロ圏は、2011年10~12月期から続いたマイナス成長をようやく抜け出し、2013年4~6月期からプラス成長に転じた。圏内では、こんご緩やかなプラス成長が続くと見通しをつけている。とはいえ、物価の下落圧力はいぜん消えておらず、同地域が成長力を取り戻したといい切るには、ためらいがある。ECB(欧州中央銀行)は、2回の利下げで現行金利を0.25%としているが、域内に台頭するデフレ懸念でさらなる利下げの判断を迫られそうである。

 明るい材料もある。一時、財政危機に陥ったアイルランドが、歳出削減と増税姿勢を貫き財政再建に一定の成果を上げていることだ。経済活性化を図るため、外国企業の誘致を狙いに法人税率を12.5%の低率に据え置いている。

 一方、中国では政府系研究機関・社会科学院が、2014年の実質国内総生産(GDP)伸び率を7.5%と予想している。同国のシンクタンクやアジア開発銀行も同様の見通しである。ただ、この成長率達成には、こんごの構造改革の進めぐあいが大きく関わってくる。

 対日関係では、わが国首相の靖国参拝を巡り、近隣諸国と政治・外交面で緊張の高まりが予想され、それが日中の経済交流に差し障るとの懸念が広がっている。 

 11月期の倒産件数は902件(前年同月比9.4%減)、負債額は1,380億9,600万円(同47.7%減)と、件数・負債額ともに減少した。このうち負債額「1千万円以上」は、862件(同10.6%減)と13か月連続の減少、負債額も1,378億8,400万円(同47.7%減)と前年同月比で大幅な減少である。この結果、件数・負債額ともに過去20年間での最小を記録した。件数の減少は、金融機関が中小企業のリスク要請に応じていることや、中小企業金融モニタリング体制の効果で倒産が抑制されているためとみられる。負債額の大幅減少は、負債額「100億円以上」の大型倒産が2か月連続でゼロだったほか、負債額「1億円未満」の小規模倒産の構成比が72.5%を占めたことによる。