[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/10/11 1:41 に Matsumoto Norikazu が投稿
列島に久々の高揚感 
~2020年夏季五輪・パラリンピックの東京招致~ 


 2020年の夏季五輪・パラリンピックは、東京で開催されることが決まった。ビッグイベントは、国民に健康的な希望をもたらすと同時に、こんご7年間にわたる社会基盤整備の景気押し上げ効果が期待されるだけに、列島は久々の高揚感にあふれている。祭典実施の経済効果は、3兆円にも上ると試算されている。だが、浮かれ気分で過剰投資に陥れば、祭典終了後に反動が待ち受ける。要注意である。もちろんこの間、福島第1原発の汚染水処理は、間断なく、しかも確実に進めていかなければならない。福島の置き去りは論外だ。

 政府は、8月末に7月のさまざまな経済統計を発表した。新設の住宅着工件数は11か月連続のプラス、消費者物価指数も2か月連続の上昇、鉱工業生産指数は2か月ぶりに増加に転じ、さらに失業率・求人倍率の改善など、雇用、生産、消費にわたる指標の改善が示された。8月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合で100.4と3か月連続で上昇した。エネルギー価格や原材料輸入品の値上がりが主因だが、デフレ脱却の兆しは見えはじめている。しかし、賃上げの進みぐあいはいぜん鈍く、政府・日銀の目指す「消費拡大による物価上昇」に向かっているとは、決め付けられないところがある。

 9月の月例経済報告は、景気判断を「回復しつつある」として2か月ぶりに上方修正した。企業マインドや雇用・所得環境の改善、設備投資の持ち直しなど、景気の好循環が鮮明になってきたとの判断を示している。4~6月期のGDP(国内総生産)は、物価変動を除いた実質成長率で年率換算3.8%増と、8月の速報値が上方修正された。6四半期ぶりにプラスに転じた企業の設備投資、増加率の大きかった公共投資が、数値を押し上げた。内閣府と財務省の7~9月期法人企業景気予測調査によれば、大企業の景況判断は3四半期連続で改善した。指標は、調査開始の2004年4~6月期以来の高水準となった。先行きについても、14年1~3月期までプラスが続くとの見立てである。日銀は、10月の短観(企業短期経済観測調査)で、大企業・製造業の景況感がリーマンショック後では最高として景気判断を上方修正した。

 政府は、そのほか経済指標も含めた総合判断で、来年4月から消費税を現行の5%から8%への税率引き上げを決めた。同時に増税による景気の腰折れを避けるため、13年度補正予算で歳出規模約5兆円の経済対策を取る。そのほか1兆円規模の設備投資や賃上げを促す企業減税も取り入れる方針だが、趣旨がどこまで浸透するかは疑問視される。現状は、個人消費に一服感があり、設備投資に勢いがないが、中長期的にはオリンピック開催というポジティブなシグナルを発しながら、景気は緩やかな上向きの軌道をたどるとみられる。とはいえ、スポーツの祭典と成長路線に浮かれてばかりもいられない。ここで、財政の健全化に向けて増税と厳しい歳出削減の先送りは許されないだろう。財政破たんの憂き目にあわないためにも、財政へ相応の目配りが欠かせない。

 海外の動向はどうだろう。米・FRB(連邦準備制度理事会)は9月中旬、金融緩和縮小の見送りを決めた。一連の経済指標が、なお景気回復の足取りを固め切れていないとの判断による。緊急の危機対応だったとはいえ、経済・金融対策が大掛かりであればあるほど、正常な形にもどすことがいかに難しいかを物語っている。一方で、米議会は10月からはじまる新年度暫定予算を期日までに成立させられず、一部行政機能が停止状態に陥った。18年ぶりの異常事態で、国民生活や景気への影響が懸念されている。EU(欧州連合)では、一時の危機感が薄らいでいるものの、いぜん成長力の乏しい状況が続いている。

 中国では、8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2か月連続で改善、大企業中心に景況感が上向きはじめた。指数は、好不況を分ける50が11か月連続で上回り、1年4か月ぶりの高水準となった。そのほか新興国は、米の金融緩和縮小を見越した資金流出で、一時通貨安とインフレ傾向に悩まされ失速気味だったが、緩和縮小の先送りでやや落ち着きを取り戻している。

 企業倒産・8月期の特色は、件数・負債額ともに前年比大幅に減少したことである。倒産件数は、864件(前年同月比13.4%減)と91年2月以来22年6か月ぶりの低水準である。これは、中小企業金融円滑化法の終了に対応した「金融モニタリング体制」や金融庁が4月に実施した「監督指針」などで、金融機関の中小向け融資が増えたことが影響しているとみられる。  負債額も1,665億500万円(同23.2%減)と2か月連続の減少、さらに8月単月では1991年以降で最小となった。これは負債額「100億円以上」の大型倒産が、大阪の土地売買業「(株)ZKR」(負債額197億7,900万円)と東京の電気機械器具小売業「べレッツアクラブジャパン(株)」(同157億9,000万円)の2件に止まり、負債額「10億円以上」の倒産も今年最小の22件に止まったためである。一方、負債額「1億円未満」の小規模倒産は前年比11.7%減の627件だったが、構成比は前年を1.5ポイント上回る72.6%といぜん高水準にある。