[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/09/10 22:19 に Matsumoto Norikazu が投稿

景気を左右する消費税増税と米金融緩和縮小の行方

 8月の列島は、連日の猛暑・熱帯夜とゲリラ豪雨など異常気象に見舞われ、人々や地域に多大な影響をおよぼした。もちろん産業社会への影響も少なくない。盛んな人間活動によって地球温暖化が進んだ結果との指摘もある。ともあれ、技術開発と環境破壊という二律背反に、どう折り合いをつけるかは人類最大のテーマである。こんご、異常気象が恒常化しないといい切れないところが心配である。

 景気動向は、どうだろう。8月の月例経済報告は、物価動向について「デフレ状況ではなくなりつつある」としている。しかし、ただ単に物価の上昇だけでなく、雇用・所得環境の改善によって個人消費を活気づけ「良い物価上昇」につなげられるかが問題である。 

 8月の4~6月期国内総生産(GDP)速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率で前期比年率2.6%増、名目成長率で同2.9%増と、ともに3四半期連続のプラスとなった。生活実感に近い名目成長率が実質成長率を上回ったのは、12年7~9月期以来3四半期ぶりのことである。来年4月からの消費税増税を実施するかどうかの判断材料の一つとなる。 

 7月の街角景気は、指数が4か月連続で低下した。ただ、指数は横ばいとする50を上回っているため、基調判断は「緩やかに持ち直し」としている。2~3か月先の判断指数も、前月に横ばいである。しかし、設備投資は6四半期連続のマイナス、7月消費動向調査では消費者の購買意欲を示す消費者態度指数が2か月連続で悪化した。勤労者の賃上げがなかなか進まない一方、生活必需品が徐々に値上がりしている現状を映している。このため、基調判断を「改善のテンポが緩やかになっている」と昨年11月以来の下方修正となった。いずれにしても、いくつかの指標は本格的な景気回復を告げていない。 

 日銀は、8月の金融政策決定会合で4月に導入した「量的・質的金融緩和」策の継続を決めた。年初から7か月連続で上方修正してきた景気判断は、「緩やかに回復しつつある」で据え置いた。 

 経済の実際の動きとしては、円高修正による輸出の回復と消費者心理の改善、堅調な個人消費、米景気の回復など、プラス要因をベースに緩やかな回復基調が続くとみられる。上場企業の業績拡大は顕著で、14年3月期決算予想は大幅な増収益が見込まれている。ただ、現時点では、国内の実体経済に好転の広がりがなく、景気の上向きカーブを描ききれていない。やはり勤労者が賃上げを実感し、個人消費につながるという好循環に入らないとデフレ脱却の道をたどれないだろう。カギは、成長戦略の実効性にあるが、差し当たっては政府が消費税増税に踏み切るかどうかの判断も、景気動向に大きく関わってくる。 

 外部要因では、米の4~6月期GDP(国内総生産)が前期比1.7%増を示すなど、緩やかな回復をたどっているのは、世界経済にとって心強い。企業部門では輸出や設備投資の上向き、さらに住宅市場の復調、個人消費の堅調などが背景にある。米FRB(連邦準備制度理事会)は、7月末に金融の量的緩和と政策金利実質ゼロの継続を決めたが、市場では金融の量的緩和縮小に対する警戒感がいぜん強い。それに、連邦政府が再び債務不履行(デフォルト)に陥る懸念が生じている。10月には、債務の借入枠上限額の引上げを迫られるが、民主・共和両党の折衝の行方に目が離せない。成り行きによっては、新たな景気のリスク要因となる。 

 ユーロ圏では、4~6月期の成長率プラスが報じられた。これで、一時期の切迫した危機感はやや薄らいだものの、南欧諸国が財政危機を脱したというわけではなく、なおしばらくは安定的な成長路線への回帰はかないそうにない。中国はシャドーバンキング(影の銀行)問題を抱え込み、そのほか新興国では米の量的緩和縮小によって大量の資金流出が起きるとの懸念が強まっている。中東情勢がらみでは、エネルギーや原材料の価格変動も、こんご注意深くみていかなければならない要因である。 

 7月期の倒産件数は、1,068件(前年同月比2.1%増)と9か月ぶりで増加に転じた。なかでも、負債額「5千万円未満」や従業員数「4人以下」での倒産増が目立つ。負債額は1,997億9,700万円と前年比72.4%の大幅減となった。7月の負債額としては過去23年間の最小である。負債額の大幅減は、前年同月に貸金業「(株)クラヴィス」(負債3,268億8,700万円)、海運業の「三光汽船(株)」(同1,558億7,400万円)2件の大型倒産のほか、負債額「100億円以上」の大型倒産4件が発生したことによる反動である。 

 7月は、負債額「100億円以上」の大型倒産として、東京の建物売買業「京都駅南開発特定目的会社」(同204億円)、東京のゴルフ場「(株)利根ゴルフ倶楽部」(同187億円)、東京の船舶貸渡業「(株)テクノ・シーウェイズ」(同150億円)の3件が発したが、その一方で、負債額「1億円未満」の小規模倒産は前年比5.8%増の771件にまで増え、構成比は前年を2.5ポイント上回る72.2%を占めた。 

 負債額「1千万円以上」の倒産件数は1,025件(同0.1%減)と7か月連続の減少、しかも過去20年間の最小を記録した。負債額は1,995億6,300万円(同72.4%減)である。