[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/07/11 22:16 に Matsumoto Norikazu が投稿
為替相場・株式市場はいぜん乱調 

 一時ブーム化した円安・株高の潮目が変わった。少なくとも、円安だけに頼っていては持続成長を望み得ないし、健全な市場発展のためには、効果的な構造改革が避けて通れないことがはっきりした。構造改革は、医療、電力、農業分野をはじめとして幅広い面にわたる。そこで雇用の改善、賃上げの実現を通じ個人消費の増加に結びつけなくては、本当の意味で経済成長のレールに乗せられない。

 第三弾成長戦略の内容が明らかになった。インフラ整備など公的分野で規制緩和を進めるとともに、戦略特区の創設で民間活力を引き出すことを狙っている。具体的には、民間資金を活用して空港、港湾、道路、上下水道など社会資本の整備を進める。民間資本の活用は、こんご10年間で12兆円規模とする。また同時期までに、一人当たりの国民総所得を150万円以上増やすとしている。しかし市場の受け止め方は、計画を実行に移す道筋がはっきりしないとシビアで、計画の発表当日の株価は暴落した。もろもろの規制緩和に対する踏み込み不足が失望感を誘った。その後、自民党は参院選の公約に投資減税・法人税の引き下げを盛り込んだ。これについても、実際にどれだけ踏み込めるかがはっきりしない。

 国内の景気指標では、6月の月例経済報告が景気の基調判断を2か月連続で上方修正した。内閣府と財務省の4~6月期法人企業景気予測では、大企業の景況感を示す景気判断指数が2011年7~9月期以来7四半期ぶりの高水準となった。先行きも、10~12月期まで改善が見込めるとしている。1~3月期のGDP(国内総生産)は、物価変動の改定値を除く実質で前期比1.0%増(年率換算で4.1%増)と、5月の速報値を上方修正している。日銀は6月の金融政策決定会合で、4月に打ち出した金融の「量的・質的緩和」の維持を決めた。また6月の短観(短期経済観測調査)は、企業の景況感を示す業況判断指数が「大企業・製造業」で2期連続の改善、しかも2011年3月期以来の高水準となり、先行きの明るさに期待をつないでいる。いずれも、円安・株高に伴い生産・輸出・個人消費などが比較的順調に推移、さらに設備投資の上向き、米景気の回復などが下支えとなっている。中小企業でも指数の改善はされてはいるものの、なお水面下を脱し切れていない。

 5月の貿易統計速報では、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が9,939億円の赤字となった。赤字は11か月連続、しかも5月としては過去最大だった。相変わらず、LNG(液化天然ガス)など高コストの燃料輸入が影響している。

 海外動向では、OECD(経済協力開発機構)が5月、新しい世界経済見通しを報じた。2013年の日本の実質成長率を1.6%と予想、昨年11月時点での予想0.7%の成長率を大幅に上方修正している。アベノミクスによる円安効果をみたものだ。米国は1.9%、欧州は0.6%減と、それぞれ下方修正された。14年は日本1.4%とみるが、より長期の成長見通しを得るには、こんごの成長戦略と財政健全化に向けた信頼に富む計画が必要としている。

 米国では、住宅市場の復調、消費者心理の改善などに景気回復の堅調ぶりがうかがえる。もっとも、もろもろの経済指標が楽観的な数値ともいえず、先行きの警戒感は消えない。それでもFRB(連邦制度準備理事会)のバーナンキ議長は、 金融引き締めについて「アクセルを踏む力を緩めるが、ブレーキを踏むわけではない」とクルマの運転操作に例え、経済見通しが予想通りなら量的緩和策を年後半から縮小する可能性に触れている。緊急事態が和らげば、金融政策を少しでも正常化させようとするのは、しごく当然のことである。しかし、これまで株式市場に出回っていた豊富な資金が減少するとの懸念から、NY株式市場は今年最大の下げを演じた。日本の株式市場も、米の量的緩和策縮小を巡る思惑から不安定な動きが続いている。

 そのほか地域をみると、欧州の債務危機は小康状態にあるが、経済そのものはマイナス成長から脱し切れそうにない。高度成長から低成長への移行段階にある中国では、生産・投資に伸びを欠き、ブラジル、インド、ロシアなどの新興国も変調をきたしている。それだけに、世界経済は日・米の景気回復に大きな期待をかけている。このところ、日本の株式市場は乱高下が続いているが、国内経済の実体は基本的に持ち直しから回復に向かっている。 

 5月期の倒産件数は、1,080件(前年同月比9.2%減)と前年同月比で7か月連続の減少、また5月単月としては過去20年間で2010年に次ぐ低水準となった。負債額も、1,735億1,300万円(同38.6%減)と、5月としては過去20年間の最小額を記録した。負債額「100億円以上」の大型倒産が、栃木のパチンコホール・ボーリング場経営「東海産業(有)」(負債額101億7,700万円)の1件に止まったことと、負債額「1億円未満」の小規模倒産のシェアの高さが影響している。ちなみに負債額「10億円以上100億円未満」の倒産は、岡山の石膏ボード原紙・チップボール紙製造「山陽板紙工業(株)」(同50億7,500万円)、東京の不動産代理業「(株)ユナイテッド・コーポレーション」(同50億円)、東京のリース業「SL(株)」(同49億円)など29件である。負債額「1千万円以上」は、1,045件(同9.0%減)、負債総額1,733億3,000万円(同38.7%減)である。