[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/02/13 22:50 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2013/02/19 23:05 に更新しました ]
市場心理は好転 

 2012年、米ではオバマ大統領が再選されたが、そのほか多くの主要国でトップが入れ替わった。日本の政権も自民党に戻った。これで、いきなり世界経済の流れが方向づけられたというわけでもないが、新しい政府がデフレ脱却と円高是正を前面に打ち出したことで、潮目変化の予兆は感じられる。

 政府は20兆円超の緊急経済対策を閣議決定するとともに、平成25年度の予算案も決めた。これから国会審議を通じて、政府が経済成長による税収増と歳出削減というテーマにどう取り組むのかを見極めていきたい。

 一方、日銀は1月の金融政策決定会合で2%のインフレ(物価上昇率)目標を決めた。同時に追加の金融緩和策として、期限を設けずに国債などを買い入れる、基金枠をさらに拡大する。これで大型の財政出動と大胆な金融緩和策は整ったが、これらはいわば民間企業の活性化と個人消費をうながす誘い水に過ぎない。持続的な景気回復につなげるには、成長戦略で雇用・賃金の改善を現実にすることが前提となる。雇用と賃金を置き去りすれば、物価だけが上昇するマイナス作用が働く。いわゆる悪いインフレに陥る。

 経済・金融政策の発動で、市場ではすでに思惑が先行、円安・株高が急ピッチで進行している。政策発動したからといって、すべて予期通りの成果を得られるとは限らない。生きものである経済を、人間の都合でコントロールするのはきわめて難しい。問題は、大胆な金融緩和や機動的な財政政策などを好感している市場心理をどこまで維持した上で、どうやって本格的な成長軌道につなげていくかにある。

 もちろん、その先に待つ財政の健全化というテーマにも応えなければならない。いつの日か、大型の財政出動、国債の大量発行の後処理に必ず迫られる。これら借金を、成長の成果だけで賄えるかの懸念が常につきまとう。

 これから景気動向と連動してくるのが、消費税増税の実施である。景気回復が、当初の見込みよりはかばかしくなくとも、増税は前向きに進めるべきであろう。いずれにしても、論議の前に増税の環境を整えることと、増税後の景気失速がないように手立てを尽くさなければならない。

 海外動向をみると、米景気の回復感、中国の景気底入れ感、加えて欧州の小康状態などが、市場心理にプラス作用している。とくに米国では、自動車市場の復調が伝えられ、雇用や住宅市場の指標も改善されている。

 IMF(国際通貨基金)は2013年の世界経済見通しについて、実質成長率3.5%と前年(3.2%)に比べ加速するとの予想を出している。日本については、緊急経済対策や金融緩和、円安に伴う輸出回復など、少なくとも短期的には成長を望めるだろうが、「中期的な財政戦略を欠けば深刻なリスクをもたらす」と、財政再建への努力、構造改革の進展をうながしている。

 国内景気は、大型の財政出動、大胆な金融政策の支えがあって、夏場の参院選までは徐々に持ち直し基調が続くとみられる。その後は、海外動向と成長戦略の取り組みぐあいを見きわめていくことになるだろう。もっとも、内閣府の11月景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が8か月連続で悪化したことから、基調判断を「悪化」で据え置いた。しかし、年明けとともに徐々に回復への期待が高まっている。①12月以降、生産や株式市場の持ち直しに加え、海外経済にも明るい兆しがみられる、②政府の緊急経済対策による景気押し上げ効果への期待、③ひところ最悪だった日中関係にも徐々に和らぎがみられる、などが背景にある。
  2012年の貿易統計では、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は6兆9,273億円と過去最大の赤字を記録した。中国や欧州向けの輸出落ち込みと、高止まりのままの燃料輸入が響いている。


平成24年通年(1月~12月)の倒産動向

 ここでは平成24年通年(1月~12月)の企業倒産について概略を述べる。通年の倒産件数は12,504件(前年比5.5%減)、負債額は3兆8,363億7,100万円(同6.7%増)となり、件数は平成22年から3期連続の減少、負債額は23年の大幅な減少から一転増加に転じた。件数の減少は「中小企業金融円滑化法」など一連の金融支援が功を奏していると思われる。一方、負債額の増加は負債額「100億円以上」の大型倒産が23年の27件から35件へ(同29.6%増)と大幅に増えたことによる。

 業種別では、「卸売業」が1,831件(同9.4%増)と前年比で増加したのを除き、その他業種は「建設業」3,073件(同11.9%減)をはじめ、「製造業」1,826件(同6.3%減)、「小売業」1,504件(同3.1%減)、「飲食業」823件(同6.5%減)、「サービス業」2,374件(同9.4%減)など、いずれも減少した。

 原因別では、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産が10,214件(同6.1%減)と前年に比べ減少したが、中で「既往のシワ寄せ」だけは1,332件(同22.0%増)と増加している。

 従業員規模別では「9人以下」事業所が8,011件(同1.8%増)、資本金規模別では「個人」と資本金「1億円未満」で12,340件(同5.4%減)が発生、また小規模企業(商業サービス業は従業員5人以下、製造業その他は20人以下)の構成比は67.3%で23年から3.8ポイント上昇した。

 形態別では、「破産」「再生手続」「特別清算」「会社更生法」などの法的倒産が10,385件(同3.9%減)となった。法的倒産に占める「破産」シェアは92.3%である。

 その他東京商工リサーチの発表によると、24年中の震災関連倒産が487件(前年544件)、「中小企業金融円滑化法」に基づく貸付条件変更後の倒産が249件(同150件)、円高関連が72件(同59件)、上場企業倒産が6件(同4件)、第三セクター等の倒産が19件(同21件)である。 

 12月単月の倒産件数は922件(前年同月比13.9%減)、負債額は2,085億2,700万円(同41.6%減)である。このうち負債額「1千万円以上」の倒産は890件(同13.8%減)で1991年9月以来21年3か月ぶりに900件を下回った。こうした倒産件数の減少は「中小企業金融円滑化法」などの支援策の効果とみることができるだろう。また負債総額も2,083億4,600万円(同41.5%減)にとどまり、前年比が3か月ぶりに大幅な減少となった。これには12月における負債額「10億円以上」2区分の大型倒産が前年の41件に対し36件(同12.2%減)に止まった影響が大きく、特に「100億円以上」の区分で前年の6件から3件(同50.0%減)に減少したことで同区分の負債額も前年同月から1,204億2,700万円減少(同79.2%減)したことが月次負債額の減少に大きく貢献している。