[00]最近の景気動向と企業倒産

2013/01/16 0:26 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2013/01/16 0:26 に更新しました ]

テーマはデフレ脱却と円高克服

 新しい内閣が発足した。喫緊の課題が山積している。とりわけ経済面で緊急度の高いテーマは、デフレからの脱却と円高の克服である。新内閣は、さっそく公約に基づく緊急経済対策として国の支払いベースで9~10兆円、さらに24年度補正予算案では12~13兆円規模を見込んでいるようだ。政府は、日銀との連携強化にも積極的である。

 日銀は、12月の金融政策決定会合で追加の金融緩和策として、資産買い入れ枠を10兆円拡大、総額101兆円とすることを決めた。同時に、2%のインフレ目標設定の検討に入った。しかし、金融緩和で供給される資金が、期待されるように企業の設備投資や個人の住宅・自動車の購入などに回らず、賃金は抑制されたまま物価だけが上がるということになれば、日本経済はいわゆる悪いインフレに陥る。こうしたリスクも考えておかなければならない。

 成長優先策で、公共事業に巨額な資金を投ずれば、一時的に景気刺激のカンフル剤にはなるだろうが、経済効果の持続性にそれほどの期待はかけられない。1990年代から、景気回復を図るために公共工事に巨額な財政出動を続け、結果として国・地方の財政悪化を招いてきた苦い過去がある。問題は、この教訓をどのように生かし、また市場がこの姿をどう評価し、どう判断するかである。舵取りが難しい。大型の財政出動をするにしても、財政規律の維持という視点は、なおざりにできない重いテーマである。

 成長戦略の基本は、民間企業が活動しやすい環境を地道につくり上げていくことにある。円高是正、法人税の取り扱い、経済連携協定の遅れ取り戻し、電力供給システムの整備、そして規制緩和などがあげられる。結果としてデフレの克服がある。

 経済開発協力機構(OECD)は11月、日・米・ユーロの12年、13年の実質国内総生産(GDP)成長率について、5月時点の予測からいずれも下方修正した。12年は日本1.6%増、米2.2%増、ユーロ0.4%減、13年は日本0.7%増、米2.0%増、ユーロ0.1%減と日米は漸減、ユーロは引き続きマイナス成長を見込んでいる。

 中国の景気は、徐々に持ち直しの気配がうかがえる。米国では、このところ雇用統計、住宅関係などの指標が最悪期を脱していることから、先行きにやや明るさを期待する向きもでてきた。一方で年初にかけ当面していた「財政の崖」に対して、米議会が中間所得層の減税延長や強制的な歳出削減の実施を2か月延長する法案を可決したことで、差し迫った危機感は回避された。欧州でも債務危機が小康状態にあり、世界市場には安心感が取り戻されている。確かに、これら主要国・地域の動きは、潮目変化の予兆をうかがわせる。といっても実態は、リスクが根本的に解決されたわけではなく、一時先送りされただけとの冷静な受け止め方もある。

 国内では、12月の月例経済報告で「このところ弱い動き」とした前月の基調判断を据え置いた。ただ、落ちていた生産に動きが出始め、自動車の販売にも回復の兆しがうかがえるようになってきた。加えて、新内閣の一連の経済・金融政策の発信に、これまでのところ市場は好意的な反応を示している。中国経済の底入れ感も加わって、円安・株高の追い風が吹いている。年初の景気判断には、市場心理の好転をどこまで維持できるかが一つの目安になる。中小企業の資金繰りでは、これまで寄与してきた「中小企業金融円滑化法」が、2013年3月末に期限切れとなる。その出口戦略も求められる。

 11月の倒産件数は996件(前年同月比11.4%減)、負債額は2,639億5,900万円(同40.5%増)である。このうち負債額「1千万円以上」は、964件(同12.0%減)、負債額2,638億3,600万円(同40.6%増)である。11月の倒産件数が1,000件未満となるのは平成2年(801件)以来22年ぶりのことで、「中小企業金融円滑化法」が倒産の発生を抑えた格好である。  負債額の著増は、負債額「100億円以上」の大型倒産が5件も発生したことによる。福井の非鉄金属鍛造品製造業「ワシ興産(株)」(負債額404億3,300万円)、福井の自動車部分品製造業「ワシマイヤー(株)」(同200億9,700万円)、大阪の通信販売「(株)総通」(同174億9,300万円)、富山のゴルフ場「太閤山観光(株)」(同156億6,100万円)、東京のゴルフ場「ピーエスアール相武(株)」(同140億円)である。