[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/11/14 19:07 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2012/11/14 19:10 に更新しました ]

外需低迷と内需足踏みで景気下ぶれ懸念 


 景気の下ぶれ懸念が強まってきた。事実、停滞感から下り坂を示す指標が増えている。

 10月の月例経済報告は、前月の「回復の動きに足踏みがみられる」から「このところ弱めの動きとなっている」と3か月連続の下方修正となった。景気判断の連続引き下げは、リーマンショック後の5か月連続以来のことである。日銀は、10月の経済・物価情勢の展望リポートで経済成長率と物価上昇率の見通しを下方修正した。

 景気腰折れの予兆はあった。9月の景気動向指数は、景気に局面変化の可能性がでてきたとしている。9月の日銀短観(全国企業短期観測調査)も、大企業・製造業の業況判断指数が9か月ぶりの落ち込み、大企業・非製造業は前回に横ばいを伝えた。行き過ぎた円高が、製造業に大きなメージを与えているのも一因である。

 9月までの多くの指標には、調査時点とのタイムラグで尖閣諸島を巡る日中関係悪化の影響が織り込まれていない。従って今後の見通しは、とくに落ち込みが激しい自動車関連を中心に、しばらくは厳しい局面が予想される。加えて、債務危機の収束が見えない欧州経済の現状と、欧州向け輸出の多い中国の成長鈍化など外需低迷の影響から、復興需要とエコカー補助金などの政策効果による国内の回復シナリオが遠のいている。

 9月の貿易統計は、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が5,586億円の赤字となった。赤字は3期連続である。24年度上半期(4月~9月)の貿易収支も、3兆2,190億円の赤字である。この結果、半期ベースでも3期連続の赤字、しかも過去最大の赤字幅となった。中国向け輸出減が大きく響いている。

 10月、IMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が東京で開かれた。世界の金融・財政当局者が東京に集まるのは、48年ぶりのことである。IMFは、2012年度について先進国から新興国まで主要国のGDP(実質国内生産)伸び率を軒並み下方修正すると同時に、けん引役の見当たらないまま、景気下降の様相を強めている世界経済の現状に強い危機感を打ち出した。事実、債務危機の対応に腐心する欧州、欧州危機の波及と内需の低迷に悩む中国など新興国の減速、減税打ち切りと歳出削減という「財政の崖」不安を抱える米国など、中長期的な下押しリスクが目白押しである。

 つれて国内景況も、厳しさを増している。とくに尖閣諸島を巡る中国との摩擦では、文化・経済交流のパイプが次々と塞がれ、双方の輸出・生産に大きく影響している。しばらくは、視界不良の状況が続くとみられる。いうまでもなく、ここはいっそうの景気テコ入れとデフレ脱却が急務である。

 政府は10月、環境・医療・農業分野のほか震災復興支援事業を柱とする総事業費7,500億円の緊急経済対策を打ち出した。24年度の予備費活用分と地方自治体の負担分を合わせた額である。さらに日銀は、10月末の金融政策決定会合でデフレ脱却と景気悪化を防ぐため、国債などの買い入れ基金を11兆円増やして91兆円とする金融緩和措置を決めた。資産買い入れ枠の増額は、9月に引き続き2か月連続と異例の措置となった。また企業や個人の借入れを容易にするため低利で無制限の融資制度を創設する。政府も、日銀と歩調をあわせ、規制緩和や税制改革などの政策手段をとっていくことになった。

平成24年度上半期の企業倒産は件数・負債額ともに過去22年間で最小

 次に、平成24年度上半期(4~9月)の企業倒産について概略を述べる。件数は6,235件(前年同期比6.9%減)、負債総額は1兆8,093億6,700万円(同8.5%減)となった。件数は、3年連続で前年同期を下回ると同時に、過去22年間での最小を記録した。これは、「中小企業金融円滑化法」や「東日本大震災災害復興緊急保証」などの政策効果で、中小企業の資金繰りが一時的に緩和されたためである。

 負債額も、2年連続で前年同月を下回り、過去20年間での最小となった。これは、22年度上半期に「日本振興銀行」(負債額6,805億6,300万円)、「武富士」(同4,336億800万円=発表当時)、23年度上半期には「安愚楽牧場」(同4,330億8,300万円)といった大型倒産が発生したことによる反動減である。さらに24年度上半期は、負債額「10億円以上」の倒産が186件(同14.3%減)と、22年ぶりに200件を割り込んだ。全体的には、負債額「1億円未満」の倒産が93.2%を占め、比較的小規模な倒産のウエートの高さを浮き彫りにした。

 業種別では、「建設業」1,569件(同13.9%減)、「製造業」910件(同8.7%減)、「飲食業」370件(同19.2%減)、「サービス業」1,154件(同12.3%減)の4業種が前年同期比で減少、「卸売業」922件(同13.4%増)、「小売業」765件(同5.7%増)の2業種が増加した。原因別では、「販売不振」「既往のシワ寄せ」「売掛金回収難」など不況型倒産が5,086件(同7.3%減)となったが、このうち「既往のシワ寄せ」だけは662件(同23.0%増)と増加した。

 従業員規模別では「9人以下」事業所が3,788件(同3.2%減)、資本金規模別では「個人」と資本金「1億円未満」で6,159件(同6.8%減)、構成比は98.8%を占める。

 形態別では、「破産」「再生手続」「特別清算」「会社更生法」などの法的倒産が5,157件(同5.0%減)となった。法的倒産に占める「破産」シェアは93.1%である。

 9月単月の倒産件数は956件(前年同月比7.2%減)と、2か月連続で1,000件の大台を 割り込み、9月としては過去22年間の最少を記録した。同じく負債額も1,747億3,600万円(同17.8%減)と過去22年間の最小となった。9月単月の動向については、詳細な内容を次項以下に記述する。