[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/10/03 1:37 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2012/10/03 1:37 に更新しました ]

世界経済の減速で国内景気の回復ペース鈍る 

 国内経済は、欧州の債務危機と世界的な景気減速の影響を受け、下期以降に黄信号が点っている。とくに、中国との関係悪化で同国向け輸出の停滞と国内消費の落ち込みが懸念され、復興需要をテコに回復軌道に乗せようとのシナリオが崩れつつある。政府、日銀のいくつかの指標は、景気回復の後ずれを示している。

 内閣府の7月景気動向指数と、半年先の景気動向を示す指数がともに4か月連続で低下した。この結果、景気は「足踏みしている」との基調判断を前月に据え置いた。世界経済の減速で、自動車関連部品・電子部品の生産不振と輸出減が響いた。先行きについても、中小企業の売上げ減見通し、新規求人の低下傾向、エコカー補助金の受付終了による購入意欲の後退、アジア向け電子部品や一般機械の減少が見込まれるなど景気は弱含みである。

 9月の月例経済報告は、景気の基調判断を「回復の動きに足踏みが見られる」として、2か月連続で下方修正された。日銀は9月の景気判断で「持ち直しの動きが一服」と、9か月ぶりに下方修正した。輸出額から輸入額を差し引いた8月の貿易収支は7,541億円の赤字となった。7月の3,736億円赤字に続く2か月連続の赤字である。債務危機の収束が見えない欧州向け、景気減速の色濃い中国向け輸出の減少などが響いた。

 尖閣諸島の領有権を巡る日中間の摩擦は、当面収まりそうにない。さすがに反日デモの過激派による破壊・略奪・放火は止んだが、その後の経済的交流はぎくしゃくしている。このままの状態が続けば、日本経済への影響は避けられず、さらに世界経済の下押し要因ともなりかねない。といっても、収束には長い時間がかかるとみられ、せっかく持ち直しできた国内景気に新たなリスク要因を抱えることになった。世界同時不況に陥る可能性も否定できない。

 9月に入って日・米・欧の中央銀行は、金融の量的緩和で世界景気を下支えする体制を整えることで足並みをそろえた。ECB(欧州中央銀行)は、9月の理事会で財政危機に陥った国の金利上昇を防ぎ市場を沈静化するため、南欧債務国の国債購入額を無制限とすることを決めた。ただし、購入対象は償還期間の短い国債に限定、ユーロ圏に財政規律の強化を約束できる国に限っている。しかし、財政規律の緩んだ国で、規律の強化が素直に受け入れられるかとなると、なかなか容易でない。そのプロセスを考えると、世界経済の減速は長引くとの見立てが有力になってくる。

 米FRB(連邦準備制度理事会)は、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)でMBS(住宅ローン担保証券)の購入額を上積みする量的緩和第3弾(QE3)の導入を決めた。米国では、年末にかけて大型減税の失効と歳出の強制削減が重なる、いわゆる「財政の崖」をどう乗り越えるかが大きな課題である。11月の大統領選で、民主・共和2党が政策論争で、この問題をどのように収斂していくか注目の的である。

 日銀は9月の金融政策決定会合で、国債など購入の基金枠を10兆円拡大、80兆円とする追加金融緩和を決めた。こうした日・米・欧の金融政策にも関わらず、景気浮揚の効果は限定的との見方が少なくない。潤沢な資金が企業の設備投資に向けられればいいのだが、投機市場に回るなど副作用の懸念が残る。

 日本は、国内経済が堅調なうちに世界経済を回復軌道に乗せるシナリオを描ければいいが、なかなか難しい状況にある。円高、デフレからの脱却という重い課題を抱えながら、成長力の強化を図るほかないだろう。

 8月の企業倒産件数は998件(前年同月比8.8%減)と、平成17年4月(969件)以来7年4か月ぶり、また8月としては平成2年(666件)を過ぎて以降の最少となった。負債額は2,168億円(同72.7%減)と前年同月を大幅に下回った。負債額の大幅減は、前年に和牛オーナー制度運営「安愚楽牧場」(負債額4,330億円)と消費者金融「SFコーポレーション」(同1,897億円)2件の大型倒産が発生したことによる反動である。負債額「1千万円以上」の倒産件数は967件(同5.8%減)、負債額は2,166億3,400万円(同72.7%減)である。  負債額「10億円以上」の大型倒産は31件(同8.8%減)に止まった。このうち同「100億円以上」の大型倒産は、育林業の「(社)青い森農林振興公社」(負債額367億円)とゴルフ場の「ツインフィールズ(株)」(同189億7,000万円)の2件である。