[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/03/29 19:25 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2012/04/06 1:49 に更新しました ]
復興需要が下半期に企業業績を押し上げ

 東日本大震災の発生から1年1か月が経った。復興事業は着々と進められているが、いまなお膨大な量を抱える被災地のがれき処理は各地の受け入れが進まず、原発事故による放射性物質の除染作業も遅々として進まない。被災地立ち直りの道のりは容易でない。しかし、さすがに被災地の現状を危惧する世論に押されて、がれき処理を受け入れる自治体が増えてきた。事態は、改善に向けて進み出したとみていい。民間調査機関の復興需要見通しにも弾みがついてきた。夏以降には第三次補正予算の執行が本格化するのに伴い、建設をはじめ鉄鋼、セメントなど基礎資材を中心に、2012年度の企業業績は大きく上向くとみられる。

 さらに復興需要に加え、エコカー補助金の復活、住宅エコポイントなど政策効果への期待、徐々に緩和されている円高、米向け輸出の復調など、景気が足踏み状態から抜け出る兆しはみられる。もっとも、復興需要は地域限定の要素が大きく、全体への波及効果となるとやや懐疑的で、一気に上向きに弾みをつけるほどの力強さは伴っていない。

 日銀は、3月の金融政策決定会合で、成長分野の企業支援として金融貸出枠を3兆5,000億円から5兆5,000億円に拡大することを決めた。デフレ脱却のためには成長力を高めるほかないとして、金融面の支えを強くするとともに、政府にもその対応を促している。また4月の短観(全国企業短期経済観測調査)では、景気判断を昨年12月の判断から引き上げた。

 海外動向では、FRB(米連邦準備制度理事会)の景気認識引上げで、米株式市場は4年ぶりにダウ平均13,000ドル台の高値をつけた。ギリシャのデフォルト(債務不履行)問題は、同国債を保有する大方の民間金融機関の協力とEU(欧州連合)、IMF(国際通貨基金)の第二次支援実施で、大量の国債償還を乗り切り、ひとまず金融市場の緊張は和らいだ。ただ、こんご緊縮財政を強いられる同国の経済成長は、かなり制約されるだろう。

 東証株価は、この事態を好感して昨年7月以来、約7か月ぶりに日経平均1万円台を回復した。米株高と円安も加わり、先行きの明るさに期待が高まっている。これまで世界的に出遅れ感が目立っていた日本株に、外国人の買いが続いていることが相場の好転を後押ししている。円安と株高は、景気刺激に一定の効果をもたらすだけに、少なくとも現状は歓迎される。よほどの不測事態がない限り、年内は徐々に上値を切り上げていくだろう。といって、手放しの楽観は禁物である。

 懸念は、原油高と夏場の電力供給がどうなるかにある。原油高の背景には、イランを巡る中東の政治的緊張と米経済の好転によるガソリン需要の増加、日米欧の金融緩和継続による余剰資金の市場流入などがある。お陰で原油のWTI価格は、3月初旬の時点で一時110ドル/バレルと、10か月ぶりの高値をつけた。その後はやや落ち着いた動きだが、世界的な経済活動への影響懸念を引きずっている。せっかく持ち直しの動きをみせている国内景気だが、原油価格と夏場の電力供給不安は、やはり気重くのしかかっている。

震災関連の累計は東京が最多の160件

 2月期の倒産件数は1,072件(前年同月比5.2%増)、負債額は6,314億3,500万円(同53.9%増)である。このうち負債額「1千万円以上」は1,038件(同5.2%増)と3か月ぶりに前年同月を上回り、負債額は6,312億6,300万円(同53.9%増)と前年に比べ大幅に膨らんだ。増加は、製造業では過去最大の負債額を出した半導体大手の「エルピーダメモリ(株)」(負債額4,480億3,300万円)が会社更生法の適用を申請したことによる。

 東京商工リサーチの調べによると、2月の震災関連の企業倒産は53件で、昨年3月からの累計は636件、負債額の累計は9,213億5,500万円に上る。都道府県別では、東京の160件が最多で、次いで北海道、福岡、岩手、大阪、福島・愛知、宮城・静岡、石川と続く。業種別では、サービス業、製造業、卸売業、建設業などの倒産ケースが多く目立つ。広範な地域、多様な業種など被害内容が阪神・淡路大震災と大きく異なる点も特徴的である。なお事業ストップで事実上の倒産に追い込まれながら、法的手続がとられていない企業も多数に上るため、こんご徐々に指標に顕在化してくるとみられる。 

 円高関連の倒産は7件、負債額「100億円以上」の倒産は、前記の「エルピーダメモリ」と沿海旅客海運業「海上アクセス(株)」(同138億6,100万円)の2件。「エルピーダメモリ」は、昨年9月以来5か月ぶりの上場企業倒産で、同社関連では「秋田エルピーダメモリ(株)」も負債額79億6,100万円に上る大型倒産である。