2012年 3月(2012年1月調査)
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[00]最近の景気動向と企業倒産
彼岸は、暑さ寒さの峠である。もっとも、それは太平洋側中心の手前勝手な話だが、それら地域では彼岸前から一日ごとに日脚は伸び、枝先には春がほころびはじめた。変転きわまりない人間社会と違って、季節の巡りはまことに律儀である。 2月末、国内の半導体大手エルピーダメモリが破たんした。負債総額は、製造業では過去最大の約4,480億円に上る。半導体の市況悪化と円高の影響をもろに受け、この間、資本提携交渉もまとまらず、結局、会社更生法の申請に踏み切った。 |
[01]1月の主な動き
1月の倒産件数は1,015件(前年同月比7.3%減)、負債額は3,495億1,200万円(同47.7%増)となった。 うち負債額「1千万円以上」の倒産件数は985件と13年ぶりに1,000件の大台を下回った。 しかし、負債額はゴルフ場を含む大型倒産で、前年比47.8%の大幅増となった。 ![]() (2)不況型倒産の構成比が2年ぶりの80%大台割れ 「販売不振」など不況型倒産の構成比が、79.2%(負債額「1千万円未満」を含め79.0%)と平成22年1月(79.7%)以来2年ぶりに80%の大台を割り込んだ。これには、「販売不振」が平成19年9月(692件)以来、3年4か月ぶりに700件の大台を下回ったことも影響した。 (3)法的倒産の構成比は83.2% 「破産」など法的倒産の構成比は83.5%(負債額「1千万円以上」は83.2%)と、いぜん高水準にある。 (4)小規模企業の構成比は63.2% 小規模企業(製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は同5人以下)の倒産件数は、641件(前年同月比8.4%減)、構成比は前年を0.7ポイント下回る63.2%である。 |
[02]負債規模別の動向
1月の特色のひとつは、負債額「1千万円未満」の件数が30件(前年同月比44.4%減)と大幅に減少したことである。その結果、同区分の構成比は前年の4.9%から3.0%に低下した。しかし、負債額1億円未満の月次倒産構成比は71.5%(負債額「1千万円以上」は70.7%)を占め、いぜん小規模な倒産を中心に推移している状況に変わりはない。 各負債規模区分ごとの件数動向では、前年比増加が「5千万円以上1億円未満」183件(同2.8%増)と「100億円以上」3件(同50.0%増)の2区分、そのほかはいずれも減少した。 減少グループでは、前出の「1千万円未満」のほか「1千万円以上5千万円未満」513件(同1.9%減)、「1億円以上5億円未満」210件(同16.3%減)、「5億円以上10億円未満」36件(同14.3%減)、「10億円以上100億円未満」40件(11.1%減)である。 負債額では、「100億円以上」がゴルフ場「(株)太平洋クラブ」の倒産で1,511億7,100万円(同471.1%増)と大きく膨らんだほか、「10億円以上100億円未満」1,066億7,700万円(同0.5%増)、「5千万円以上1億円未満」121億9,200万円(同0.2%増)も増加した。一方減少区分では、「1千万円未満」1億5,700万円(同49.5%減)、「1千万円以上5千万円未満」103億6,100万円(同2.7%減)、「1億円以上5億円未満」447億1,000万円(同14.4%減)、「5億円以上10億円未満」242億4,400万円(同15.7%減)であった。 |
[03]業種別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産件数をみると、前年同月から増加したのは「卸売業」149件(前年同月比23.1%増)と「その他」97件(同1.0%増)の2区分で、そのほか区分はいずれも減少した。 減少区分では「建設業」が226件(同3.0%減)と昨年1月(233件)以来の低水準となったほか、「製造業」が145件(同11.6%減)と前年比減少を12か月連続で維持している。それ以外では「小売業」124件(同14.5%減)、「飲食業」62件(同7.5%減)、「サービス業」182件(同15.3%減)などである。 前年に比べ構成比が上昇した区分は、「建設業」(22.4%→22.9%)、「卸売業」(11.6%→15.1%)、「その他」(9.2%→9.8%)の3区分で、これ以外の「製造業」(15.8%→14.7%)、「小売業」(13.9%→12.6%)、「飲食業」(6.4%→6.3%)、「サービス業」(20.7%→18.5%)の4区分は低下した。 負債額は、「サービス業」がゴルフ場経営「(株)太平洋ゴルフ」倒産の影響で1,878億3,100万円(同226.4%増)に膨らんだのをはじめ、「飲食業」41億8,400万円(同1.5%増)、「その他」495億8,700万円(同12.3%増)の3区分で前年比増加、「建設業」314億100万円(同23.3%減)、「製造業」393億8,200万円(同4.6%減)、「卸売業」259億4,300万円(同4.9%減)、「小売業」110億2,700万円(同47.7%減)の4区分は減少した。 負債額「1千万円未満」の集計ではすべての区分で倒産件数が減少、負債額は「卸売業」を除く区分がすべて減少した。 |
[04]原因別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産件数が前年比で減少した区分は、「販売不振」698件(前年同月比9.7%減)、「過少資本」47件(同17.5%減)、「その他」22件(同26.7%減)の3区分で、増加が「放漫経営」53件(同51.4%増)、「他社倒産の余波」83件(同22.1%増)、「既往のシワ寄せ」78件(同5.4%増)の3区分、「売掛金回収難」4件は横ばいとなるなど増減はまちまちであるが、「販売不振」が平成19年9月(692件)以来4年5か月ぶりに700件を下回ったことが目をひいた。 前年からの件数構成比変動をみると、低下した区分が「販売不振」(74.3%→70.9%)、「過少資本」(5.5%→4.8%)、「その他」(2.9%→2.2%)の3区分、上昇が「放漫経営」(3.4%→5.4%)、「他社倒産の余波」(6.5%→8.4%)、「既往のシワ寄せ」(7.1%→7.9%)の3区分、「売掛金回収難」は横ばい、と件数の前年比増減に連動している。 「販売不振」、「既往のシワ寄せ」、「売掛金回収難」を合計した「不況型倒産」の構成比は79.2%(負債額「1千万円未満」も含め79.0%)で、平成22年1月の79.7%(同79.6%)以来2年ぶりに80%の大台を割り込んだ。これには、「販売不振」の700件大台割れも影響している。 負債額が前年から大きく増加したのは「既往のシワ寄せ」1,441億9,500万円(同372.6%増)と「売掛金回収難」17億8,700万円(同299.8%増)で前年比三桁の増加率となったのをはじめ、「放漫経営」201億8,200万円(同83.8%増)、「他社倒産の余波」577億7,600万円(同90.5%増)も、それぞれ二桁の増加率となった。 一方、減少区分でも変動は大きく、「過少資本」76億8,000万円(同56.4%減)、「販売不振」1,064億3,400万円(同19.7%減)、「その他」113億100万円(同18.7%減)など、いずれも二桁の減少率である。 |
[05]従業員規模別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産件数が前年から増加した区分は、「4人以下」463件(前年同月比0.4%増)と「不明」256件(同3.2%増)、「300人以上」1件(前年発生なし)の3区分、減少したのは「5人以上9人以下」130件(同17.7%減)、「10人以上29人以下」110件(同20.3%減)、「30人以上99人以下」22件(同29.0%減)、「100人以上299人以下」3件(同40.0%減)の4区分。 件数構成比を前年と比べると、「4人以下」(44.3%→47.0%)が2.7ポイント上昇、そのほか区分は「5人以上9人以下」(15.2%→13.2%)、「10人以上29人以下」(13.3%→11.2%)、「30人以上99人以下」(3.0%→2.2%)、「100人以上299人以下」(0.5%→0.3%)などが低下した。従業員規模が小さい「9人以下」企業の構成比は、60.2%(負債額「1千万円未満」を含め60.5%)である。 負債額を前年と比べると、「(株)太平洋ゴルフ」と「(株)太平洋アリエス」2社が含まれる「4人以下」が2,026億8,900万円(同349.1%増)の大幅増加、「不明」も462億1,700万円(同49.0%増)と前年比二桁の増加率であった。減少した区分では、「5人以上9人以下」170億3,100万円(同45.4%減)、「10人以上29人以下」402億300万円(同13.7%減)、「30人以上99人以下」338億1,800万円(同47.3%減)、「100人以上299人以下」82億1,300万円(同55.1%減)と、いずれも二桁の減少率である。 負債額「1千万円未満」の件数・負債額は、「4人以下」が20件(同35.5%減)、1億1,700万円(同26.9%減)、「5人以上9人以下」が1件(同横ばい)、400万円(同33.3%減)、「不明」が9件(同59.1%減)、3,600万円(同75.2%減)である。 |
[06]資本金規模別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産件数が前年比で増加した区分は、資本金「1千万円未満」386件(前年同月比5.2%増)と「10億円以上」3件(同50.0%増)の2区分、そのほか区分は減少し、「個人」163件(同7.9%減)、同「1千万円以上5千万円未満」392件(同9.5%減)、同「5千万円以上1億円未満」29件(同31.0%減)、同「1億円以上5億円未満」12件(同40.0%減)となった。 構成比の変動も件数動向に連動し、上昇した区分は同「1千万円未満」(35.3%→39.2%)と同「10億円以上」(0.2%→0.3%)の2区分、低下は「個人」(17.0%→16.5%)、同「1千万円以上5千万円未満」(41.6%→39.8%)、同「5千万円以上1億円未満」(4.0%→2.9%)、同「1億円以上5億円未満」(1.9%→1.2%)の4区分。 負債額が前年から増加した区分は、「個人」117億5,300万円(同231.1%増)、同「1億円以上5億円未満」667億2,500万円(同113.8%増)、同「10億円以上」1,124億5,300万円(同583.1%増)の3区分で、いずれも大幅に増加した。同「1億円以上5億円未満」のには、「(株)太平洋アリエス」と「ネクスネット(株)」が、同「10億円以上」には、「(株)太平洋クラブ」が、それぞれ含まれている。 減少区分は、同「1千万円未満」219億5,000万円(同15.4%減)、同「1千万円以上5千万円未満」959億2,100万円(同16.2%減)、同「5千万円以上1億円未満」405億5,300万円(同9.3%減)の3区分であった。 |
[07]営業年数別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産件数が前年比で増加したのは「2年以上6年未満」99件(前年同月比20.7%増)と「6年以上10年未満」102件(同9.7%増)の2区分で、そのほか区分は減少した。減少区分は「2年未満」13件(同40.9%減)、「10年以上20年未満」169件(同17.6%減)、「20年以上30年未満」184件(同10.2%減)、「30年以上」286件(同1.4%減)、「不明」132件(同8.3%減)である。 前年に比べ構成比が上昇したのは、「2年以上6年未満」(7.9%→10.1%)、「6年以上10年未満」(8.9%→10.4%)、「30年以上」(27.9%→29.0%)の3区分で、低下したのは「2年未満」(2.1%→1.3%)、「10年以上20年未満」(19.7%→17.2%)、「20年以上30年未満」(19.7%→18.7%)、「不明」(13.8%→13.4%)の4区分。また、「10年以上」の社歴を持つ企業の倒産は合計で639件(負債額「1千万円未満」を含め655件)に上り、構成比も64.9%(同64.5%)の高水準であった。 負債額は、「20年以上30年未満」の302億600万円(同6.8%減)が前年比で減少したのを除き、そのほか区分はすべて増加した。増加区分では「(株)太平洋アリエス」を含む「2年未満」が310億2,700万円(同1,194.4%増)と大幅に前年を上回ったのをはじめ、「2年以上6年未満」120億6,800万円(同5.1%増)、「6年以上10年未満」98億6,500万円(同6.8%増)、「10年以上20年未満」493億2,500万円(同65.7%増)、「30年以上」2,142億3,300万円(同43.9%増)、「不明」26億3,100万円(同15.8%増)など、多くの区分で増加をみせた。 負債額「1千万円未満」の件数・負債額では、前年比横ばいの「2年未満」と「20年以上30年未満」を除き、そのほか区分はいずれも減少した。 |
[08]倒産形態別の動向
負債額「1千万円以上」の倒産件数は、倒産が発生したすべての区分で前年比減少となった。内訳は「銀行取引停止」152件(前年同月比8.4%減)、「破産」741件(同4.3%減)、「再生手続」51件(同1.9%減)、「特別清算」28件(12.5%減)、「その他」13件(同23.5%減)である。 構成比を前年と比較すると、低下したのは「銀行取引停止」(15.9%→15.4%)、「特別清算」(3.1%→2.8%)、「その他」(1.6%→1.3%)の3区分で、「破産」(74.4%→75.2%)と「再生手続」(5.0%→5.2%)は上昇した。 月次倒産に占める「破産」など法的倒産の構成比は83.2%(負債額「1千万円未満」を含め83.5%)で、うち法的倒産に占める「破産」の構成比は90.4%(同90.7%)に達した。 負債額の動向をみると、前年比で増加をみせたのが「銀行取引停止」267億1,700万円(同14.1%増)、「再生手続」1,938億8,000万円(同148.0%増)、「特別清算」339億6,200万円(同38.7%増)の3区分で、「破産」934億7,200万円(同12.5%減)、「その他」13億2,400万円(同62.5%減)の2区分は減少した。 |
[09]倒産原因・営業年数別の動向
負債額「1千万円以上」の集計で倒産原因と営業年数の関連をみると、全49区分のうち件数が前年比で増加した区分が23区分、減少が21区分、横ばいが5区分で、負債額では増加が21区分、減少が26区分、横ばいが2区分となった。 前年から大きく変動した区分として、「放漫経営」の「2年以上6年未満」15件(前年同月比114.3%増)、「20年以上30年未満」8件(同300.0%増)、「30年以上」9件(同125.0%増)、「過少資本」の「6年以上10年未満」8件(同166.7%増)、「既往のシワ寄せ」の「不明」8件(同100.0%増)などがある。 負債額では、「放漫経営」の「2年以上6年未満」81億2,700万円(同5,705.0%増)、「20年以上30年未満」15億2,800万円(同215.1%増)、「不明」の4億5,000万円(同542.9%増)、「他社倒産の余波」の「2年未満」301億6,200万円(同100,440.0 %増)、「10年以上20年未満」150億2,200万円(同103.6%増)、「20年以上30年未満」69億1,900万円(同332.2%増)、「既往のシワ寄せ」の「6年以上10年未満」29億1,700万円(同177.8%増)、「10年以上20年未満」164億4,100万円(同2,984.6%増)、「30年以上」1,180億800万円(同665.3%増)、「不明」1億4,100万円(143.1%増)、「売掛金回収難」の「30年以上」13億8,000万円(同371.0%増)など、一部で大幅な増加がみられるが、「他社倒産の余波」の「2年未満」、「既往のシワ寄せ」の「10年以上20年未満」と「30年以上」は、それぞれ「(株)太平洋アリエス」、「ネクスネット(株)」、「(株)太平洋クラブ」の負債額が大きく響き、前年比の増加率を3~6桁にまで押し上げたことが影響した。 |
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