[00]最近の景気動向と企業倒産

2012/02/22 0:13 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2012/02/22 0:13 に更新しました ]

海外景気とデフレ・円高に振り回される国内景気

 景気にとって、多難な船出を思わせる年明けである。とくに円の為替レートは対ドルで77円台、対ユーロではやや円安に振れたとはいうもののなお100円前後と、歴史的な円高基調が続いている。もっとも円高というと、とかくマイナス面に目が向けられがちだが、一方で日本企業の海外企業買収の活発化という面も顕わになってきた。今後、この傾向を日本企業の国際競争力強化につなげられれば、円高にもプラスの捉え方ができる。

 海外動向では、EU(欧州連合)が金融・財政危機をどのように回避するかが、昨年から持ち越しのテーマである。回避策は、EUが主体的に実行すべき性質のものだが、S&P(スタンダード&プアーズ)によるユーロ圏9か国の国債格下げが世界経済を揺さぶっている。

 IMF(国際通貨基金)は1月の世界経済見通しで「回復は失速し、下振れリスクが増大」との懸念を抱いている。欧州危機が世界経済を揺るがしているからである。

 さらに、米国の動向が気になる。米の株式市場は、昨年来、一貫して底堅く推移、高値を継続している。今年は、大統領選の年でもあり、政策的にも例年以上の景気配慮がされるだろう。となると、年前半からの景気回復も大いに期待できる。ひところ回復テンポの鈍さがみられていた中国でも景況感の好転が伝えられるなど、世界経済の減速懸念が和らぐとの期待もかかる。

 国内景気に関しては、差し当たってめぼしい上向き材料がない。反対に、超円高と不安定な海外経済の動向から、先行きは不透明である。内閣府の景気判断は「持ち直しの動きは一服」としており、日銀は1月の金融政策決定会合で「景気は足踏み状態が長引く」との見方を示している。政策面では、19兆円規模の復興関連予算が成立したが、こんご実体経済にどのように回復のきっかけを与えるかに期待がかかる。

 電力事情をみると、5月までに原発の9割が停止する。これに伴って電力供給のひっ迫が表面化すれば、当然、企業活動への影響が懸念される。さらに、長引くデフレからの脱却も大きな課題である。

 経営者の多くは、今年の景気について「停滞」か、せいぜい「横ばい」を予想する。直近の経済指標も、先行きの楽観を許さない指数が並ぶ。しかし、それほど悲観することもなさそうだ。EUの財政・金融危機の収束見通しがはっきりしないが、国内は復興需要をテコに年後半から緩やかな回復軌道に乗るだろう。ともあれ、政治も経済も、それぞれの政策や実体が一国で完結する時代ではなくなった。景気動向の判断には、いままで以上にグローバルな視点が求められる。

負債額「100億円以上」の件数・負債額は大幅増

 12月期の倒産件数は1,071件(前年同月比6.0%減)、負債額は3,568億6,600万円(同44.7%増)である。このうち、負債額「1千万円以上」の件数は1,032件(同6.4%減)、負債額は3,566億7,000万円(同44.7%増)である。

 件数の減少には、中小企業金融円滑化法、景気対策緊急保証、東日本大震災復興緊急保証などの施策が支えになっている。一方で負債額が大幅に増加しているのは、負債額「100億円以上」の倒産が6件(同500.0%増)発生したためで、その内訳は、茨城のゴルフ場「(株)ゆたか環境緑化」(負債総額414億9,500万円)を筆頭に、三重の土木工事業「水谷建設(株)」(同353億円)、群馬のゴルフ場「上信レジャー開発(株)」(同270億円)、大阪の土木工事業「(株)下村産業」(208億5,600万円)、東京の外航貨物海運業「ドーヴァル海運(株)」(149億1,300万円)、大阪の卸売業「藤成商事(株)」(124億200万円)である。

 このほかにも負債額90億円台の倒産企業には、富山のゴルフ場「八尾観光開発(株)」(同98億8,900万円)、青森のスキー場「大鰐地域総合開発(株)ほか1社」(同97億7,000万円)、東京の照明器具販売「神田不動産開発(株)」(負債額93億9,288万円)などがあり、これらも大型倒産として負債総額を押し上げている。

 小規模企業(商業・サービス業は従業員数5人以下、製造業・その他は同20人以下)の倒産は677件(同9.1%減)で、構成比は前年を2.2ポイント下回る63.2%である。東京商工リサーチの調査によると、震災関連の倒産は66件で、昨年9月以来3か月ぶりの60件台乗せとなった。実質破たんに追い込まれていた企業が、倒産の形で表面化している。円高関連の倒産は、「ドーヴァル海運」をはじめ5件発生した。年明け後、円の為替相場は一時対ドルで77円台、対ユーロで97円台と、一気に円高方向に加速した。2月21日、EUのユーロ圏諸国による第2次支援合意によってギリシャの債務不履行は回避されたものの、いぜん同圏諸国の金融・財政危機が背景にあるだけに、危機の収束を確認するまでは円高基調が続くとみられる。このため、中小の製造業は、さらに厳しい事業環境を強いられることになる。