[00]最近の景気動向と企業倒産

2011/12/14 17:45 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/12/14 17:45 に更新しました ]
景気ウオッチャーの先行き判断指数は悪化
 総額12兆1,025億円の第3次補正予算案が、11月に入ってようやく国会で成立した。多くが復興対策に当てられるが、中小企業の円高対策にも一定の配慮が見込まれる。追って、第四次補正予算も検討課題である。

 最近の景気動向については、複数の調査機関が「持ち直し」傾向の鈍化を伝えている。
 内閣府の9月景気動向指数では、景気の現状を示す一致指数が前月比で2か月連続して低下、数か月先の景気を示す先行指数も持ち直し傾向の鈍化を鮮明にしている。10月の景気ウオッチャー調査では、指数の現状判断が前月より小幅に改善したものの、2~3か月後を占う先行き判断指数は悪化している。

 日銀は11月の金融経済月報で、景気の現状を「持ち直しのペースは緩やか」と前回より下方修正した。タイの洪水、海外経済の減速、歴史的な円高などの影響が避けられないとみる。もっとも、新興国を中心とした海外経済の復調と、東日本大震災の復興需要に先行きの期待をかける。

 いま、国内の企業にとって一番の圧力は、歴史的な円高水準である。政府は10月末、為替相場に対して、これまでの規模を大きく上回る円売りドル買い介入に踏み切った。その結果、円は瞬間的に1ドル/79円台にまで値下がりしたが、その後は77円台の推移に止まっている。政府は、今後とも異常事態には為替介入を示唆しているが、他通貨に比べ安全な資産とみられている円買いは意外に根強く、市場はしばらく投機筋との神経戦を余儀なくされそうだ。

消費と企業の投資意欲を鈍らせる株安
 EUは10月末、緊急にユーロ安定のための包括案をまとめた。骨子は、(1)欧州銀行の資本増強、(2)ギリシャ国債の債務元本削減率を50%まで引き上げる、(3)EFSF(欧州金融安定化基金)の機能強化、の3点にある。これで、ひとまずユーロ決裂の事態は避けられるはずだった。

 ところが、ギリシャのパパンドレウ首相が、EUの包括案受け入れを国民投票にかけると表明、域内は一時、騒然となった。包括案受け入れとなると、国民は増税、公務員数の削減と給与引き下げ、年金支給額の減額と受給年齢の引上げ、その他もろもろの緊縮財政策を強いられるが、当面ユーロ崩壊の危機は免れる。拒否すれば、ユーロ脱退とデフォルト(債務不履行)が待っている。国内世論、閣内の意見は、文字通り二分されたが、結局、国民投票は見送られ、ユーロ体制維持を優先させる方向を選んだ。

 さらにEU内の信用不安はイタリアに飛び火し、域内の混乱を増幅させている。EU首脳やIMF(国際通貨基金)と折衝の末、同国の財政運営は、IMFの監視下におかれることになった。といっても、監視に強制力はない。ギリシャ、イタリア、スペインの財政悪化3国は、それぞれ新内閣で財政再建に取り組むことになったが、EU域内の混乱は早急に収まる気配はなく、世界経済の先行きに不透明度が増している。

 不安の一つの現われが、日・米・欧など主要な株式市場が低迷する姿である。株安が続けば、消費活動と企業の投資意欲は慎重になり、成長にもブレーキがかかる。実態経済は落ち込むだろう。この悪い連鎖をどこかで断ち切らないといけない。

 まず世界的な金融・財政危機を克服するために各国の協調体制を整える必要がある。それにはEU17か国が包括案の実行で足並みをそろえること、日米など先進国がIMFを通じたEU支援に積極的に参加すると同時に、自国の財政再建と真剣に取り組むこと、新興国はそれぞれの成長を通じて世界経済への貢献を示すこと、などが当面の課題である。今は、経済・金融だけでなく、ヒトやモノや情報など国境の垣根が限りなく低くなっている。日本だけが、荒波を避けて垣根のウチに閉じこもっていれば、世界的な激流に翻ろうされるだけである。

 10月の倒産件数は1,008件(前年同月比15.2%減)、負債額は1,560億6,500万円(同70.0%減)となった。このうち負債額「1千万円以上」の倒産は976件(同14.1%減)、負債額は1,558億8,300万円(同70.0%減)である。前年に比べ、件数・負債額ともに減少傾向が鮮明で、倒産の沈静化を物語っている。
  負債額「100億円以上」の倒産はなく、同「10億円以上」の大型倒産は30件(同33.3%減)に止まった。上場企業の倒産はなかった。一方、歴史的な円高が中小・零細企業に与える影響は大きく、東京商工リサーチの調べによると円高関連の倒産は今年最大の9件となった。
Comments