[00]最近の景気動向と企業倒産

2011/10/17 1:15 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/10/18 2:10 に更新しました ]
円高ダメージの大きい輸出企業

 世界経済の天気模様は、このところ曇天あるいは小雨といった感じである。OECD(経済開発協力機構)は9月初旬、世界経済の見通しについて「多くの加盟国で景気回復の動きが止まり、経済活動が想定以上に弱くなっている」として、従来見通しを下方修正した。IMF(国際通貨基金)の諮問機関は、9月下旬「世界経済は危険な段階に入っている」と、警鐘を鳴らした。欧州で切迫感を強めているギリシャの財政危機や米景気の回復遅れという新しい経済・金融構造が、世界同時株安の流れを加速している。

 日本の成長率については、OECDが2011年7~9月期4.1%増、10~12月期ゼロと下方修正している。事実、国内の景気動向は、大震災後の復興需要に期待がかかる一方で、円高・株安をはじめ、電力供給の不安などリスク要因を多く抱え安定感を欠いている。

 とりわけ円高は、採算悪化を免れない輸出企業にとって深刻な事態だ。リスクを少しでも和らげようと、企業は積極的に海外に出る。それだけ国内の雇用機会は少なくなる。社会全体としての所得環境は悪化、消費の停滞を招くという悪循環に陥る。輸出産業に限らず、どの企業でも自助努力が求められるのは当然としても、企業が自ら為替相場は操作できない。だからこそ、マクロ視点で企業の競争条件を整えるのは、政府の役割ということになる。

 政府は、8月に円高対策として約4.5兆円の為替介入をしたが、単独介入ということもあり円高の流れを抜本的に変える効果はみられなかった。通貨安の国にしてみれば、安ければ安いほど輸出に有利であるため、協調的な為替介入には組しにくい。その後、政府は企業の海外投資を支援する意味で、総額1千億ドルの融資枠を創設した。これからの効果を見極めたいところである。 しかし、ことの本質はドル安・ユーロ安という外部要因にあるのだから、融資枠活用の企業にはメリットあるだろうが、肝心の円安への願いとは別の話である。

GDP比で突出する日本の債務残高

 もう一つの大きな問題は、日・米・欧の財政再建である。EU(欧州連合)では、ギリシャの債務危機がEU内銀行の信用を脅かし、世界経済回復の足かせになっている。米国にしても、債務危機に無関心でいられないし、日本の状況はさらに悪い。各国政府が、金融危機対応の後遺症ともいえる債務の増大基調から脱出するのは容易でない。

 ムーディーズが日本国債を格下げしたのは8月である。「先進国の中で政府債務が突出した水準にある、政権の短命化が続き一貫した経済・財政政策がとれない」が、格下げの理由である。いち民間企業が発する評価だから軽く見ていいというものでもない。どこの評価であろうと、下がるよりは上がる方がいいに決まっている。

 IMF(国債通貨基金)の見通しによれば、2011年の日本の債務残高はGDP(国民総生産)比で229%に達する。現状は、政府歳出のおよそ半分を国債に頼っている。こうした財政状況に対して、なまじっかの歳出削減や成長の果実としての税収増で、最悪事態を切り抜けられると考えるのは、いかにも楽観的だ。政府も国民も、財政再建が喫緊の課題という認識は共有しているのだが、その割には財政危機に対する切迫感が乏しい。真剣に中長期の財政再建に取り組む姿が見えず、景気がらみで当面の凌ぎにきゅうきゅうとする姿を国際社会にさらしている。ムーディーズの評価は、そんな虚をついている。
 ともあれ、景気は当面、復興需要を支えにやや持ち直していどで推移するとみられる。

 8月期の倒産件数は1,094件(前年同月比1.3%減)と前年に比べ4か月ぶりに低下、一方、負債額は7,943億9,200万円(同320.0%増)と8月としては20年8月(負債額8,680億8,200万円)以来の高水準となった。

このうち負債額「1千万円以上」の集計では、件数が1,026件(同3.6%減)、負債額は7,940億4,500万円(同320.3%増)である。  上場企業の倒産は、6月以降3か月連続でゼロ。震災関連の倒産は72件で、3月からの累計は318件となった。なお、倒震災関連では倒産に集計されない「実質破たん」のケースが多いだけに、今後も倒産は高水準の推移が見込まれる。