[00]最近の景気動向と企業倒産

2011/08/31 22:23 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/08/31 23:46 に更新しました ]
景気判断は「おおむね持ち直し」

23年も年後半に入った。「安心・安全」が時代のキーワードとなった。しかし、安心・安全が人類究極の願望とはいえ、現実の政治・経済・社会は変動が常で、安心・安定はあり得ないと思ったほうが自然である。列島は本格的な夏が訪れる前から、連日の猛暑に見舞われている。大震災で打撃を蒙った被災地では、着実に復旧・復興が進む一方、いまなお不本意な暮らしを強いられている方々も多い。とにかく、一日も早く誰もが安堵感を持てる環境が整うことを願うばかりである。

信金中央金庫は6月末に東日本大震災の影響についての中小企業調査を明らかにした。それによると、「直接・間接的な被害を受けた」と回答した企業が全国で68.7%、岩手、宮城、福島の3県に限れば92.8%の高率に上った。具体的な被害としては、「物流の遅延、停止」、「原材料の不足」、「消費自粛の雰囲気」などが上げられている。政府の財政措置では、ようやく約2兆円規模の第二次補正予算が成立した。

景気全般は、企業の生産と個人消費のマインド回復で、上向き軌道に乗り始めたところである。消費マインドの回復では、節電関連の商品や暑さ凌ぎのグッズ、食・飲料の伸びに期待がかかっているが、それだけで景気を大きく刺激するほどのスケールは期待できそうにない。

7月の政府・日銀の景気判断は、おおむね景気の持ち直しで足並みをそろえた。景気ウォッチャー調査(内閣府)は統計開始以来、前月比で最大の上げ幅となった。そのため、「大震災による厳しさが残るものの、持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。震災の影響で低迷していた企業の生産体制が整い、ひところ低迷していた消費マインドの回復も進んでいるとの判断である。日銀も金融政策決定会合で、震災後の復旧・復興による生産活動が持ち直し、個人消費の回復が鮮明になってきたとして、景気状判断を引き上げた。

各金融機関も中小企業の景況調査で、おしなべて売上げのマイナス幅の縮小から持ち直し、緩やかな改善を見通している。ただ、海外景気の低迷や円高、高水準の失業率など不安材料を抱えているだけに、いずれも楽観を避けている。

海外に多くの景気リスク要因

世界経済は、全体として緩やかな回復過程をたどっていたが、7月以降勢いを欠き、むしろ景気下ぶれの兆しを見せはじめている。もっとも注目されるのが米国の動きだが、採決期限ぎりぎりまで難航していた債務上限引上げ法案がようやく上院で可決され、ひとまず世界経済への影響は和らいだ。しかし、国内は雇用情勢の改善遅れと失業率の高止まり、住宅市場の回復遅れなどを引きずっており、景気減速の懸念は拭われていない。米債務上限引上げ問題を機に、急速に進んだ円高・ドル安は、同法案の可決後も解消されず、日本の輸出産業に大きな打撃を与えている。

EU(欧州連合)では、ギリシャの債務処理が片付かないままイタリア、スペインにまで財政不安が広がり、動揺が収まらない。これがユーロ安・円高を促している。またEUや新興国では、食料・資源高を背景に物価の上昇率が高まっており、インフレへの警戒感を強めている。EUでは、ECB(欧州中央銀行)が政策金利の引上げに踏み切り、金融政策で物価の安定を最優先する選択を示した。中国も、中央銀行が金融機関向けの金利を引き上げた。深刻な物価高に対応するもので、インフレ抑制の姿勢を鮮明にしている。結局、国内景気は、年後半にかけて国内外のプラス・マイナス材料を織り込みながら、全般的には緩やかな上昇カーブを描くと見られる。

6月の倒産件数は1,218件(前年同月比1.2%増)と増加したが、負債額は2,166億3,600万円(同23.8%減)と減少した。このうち負債額「1千万円以上」の件数は1,165件(同1.5%増)と2か月連続で前年同月を上回ったが、半面、負債額は2,163億5,300万円(同23.8%減)と、6月としては過去20年間での最小を記録した。これは負債額「10億円以上」の大型倒産が28件(同42.9%減)と大幅に減少したためである。その一方で、中小・零細事業所での倒産発生が増えている。震災関連の倒産は、直接・間接を含め6月に76件、3月以降の累計で173件に達した。震災後の企業対応で、なお不明なケースが多く残されており、今後それらがどんな形で表れてくるかが心配される。 なお、「[01]平成23年度上半期の主な動き」で上半期(1~6月)の倒産動向をざっと紹介し、6月単月の動向については、各論で記述する。