[00] 最近の景気動向と企業倒産

2011/07/26 21:17 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/07/26 21:34 に更新しました ]
景気回復の芽を摘みかねない政治状況

政局の混乱が、景気回復の芽を摘みかねない状況が続いている。震災対応は、政治的にも経済的にも喫緊の課題である。一般論でいえば、どんな危機にも希望の芽はあるし、形あるものは壊れる、それならば作り直せばいいとなる。しかし、被災の当事者とすれば、自ら身を置く悲惨な状況を泰然と受け流せるはずもない。震災対策のほか成長戦略、税と社会保障の一体化、財政規律の確立なども放置できない政治的・経済的な課題である。

それなのに党利党略に明け暮れる政治動向に、国民はしらけている。政治の責任は重い。与野党が協力して、一日も早く政治体制を立て直し、立法・行政本来の業務に取り組んでほしいものである。震災関連では、復興基本法がようやく成立、これから23年度予算・第二次補正予算の財源に見込む特例公債発行法案の審議にかかる。なんとも、もどかしい出足の鈍さである。

もともと6月は月末までに、震災復興構想会議の復興設計図、社会保障・税の一体改革案、新成長戦略実現会議のまとめ(年央までに政策推進の全体像をまとめる)など、基本的な経済政策が、政府サイドから提示されるはずだった。復興を軌道に乗せるには、公債発行・税制改革(所得税、消費税、法人税などの見直し)、民間資金の導入など、さまざまな視点から財源を確保しなければならない。その財源は誰かが負担することになるが、結局は国民一人ひとりか企業で負担するしかない。それでも、負担の結果が震災後の経済にダイナミズムを吹き込むことになれば、負担する者もそれなりに気持ちが満たされるだろう。

徐々に強まる復興への息吹

各地の経済動向は、大震災によるサプライチェーンの寸断や電力不足の影響が広範囲におよび、厳しさを増している。とくに、輸出の大幅減は国内経済に大きな影響を与えた。この事実をまざまざと見せつけたのが、4月の国際収支である。経常黒字は、前年に比べ約7割減と記録的な落ち込みとなった。5月の地域経済動向(内閣府)は、調査対象11地域のうち9地域の景況判断を下方修正、財務省も1~3月期の全国11地域の経済情勢について、7地域で景況判断を下方修正している。とくに震災に直撃された東北地域については、「極めて大幅に悪化」と過去に例のない表現を使っている。日本政策金融公庫は、5月の中小企業景況調査で大震災による直接・間接の被害を受けた企業の割合が77.8%に達するとしている。今後の個人消費、雇用情勢の好転も見込みにくい。
その一方で、復興への息吹も強まってきた。震災現場では、各企業の懸命な努力によって、一時は機能不全に陥ったサプライチェーンが着実に回復している。震災関連の設備投資も、急速に上向いている。

政府は6月の月例経済報告で、日銀は政策決定会合で、それぞれ景気の基調判断を上方修正した。確かに今年度下半期には、復興を軸にした経済活動の成果が徐々に現れるだろう。しかし、中長期的には、原発事故による電力問題の収束にメドがつかない限り、経済の先行きに晴れ間を期待しにくいのも事実である。

海外動向では、米国の経済指標が5月後半から軒並み市場予想を下回り、景気減速の懸念が強まっている。欧州もギリシャの財政破たんは何とか回避されたが、それで信用不安が一掃されたわけではない。新興国ではインフレ懸念から、金融引き締めに傾きつつある。中東の民主化ドミノは、相変わらず世界に地政学的な不安定さを振りまいている。

5月の倒産件数は1,099件(前年同月比3.8%増)、負債額は2,528億1,500万円(同23.7%減)である。このうち、負債額「1千万円以上」の倒産は1,071件(同4.9%増)と22か月ぶりに増加に転じた。これは大震災の発生が大きく響いたためである。負債額は、2,526億7,400万円(同23.7%減)と5月としては平成2年(2,254億3,500万円)以降の最小を記録した。これは、負債額「10億円以上」の大型倒産が、前年に比べ14.8%減となったためである。 

負債額「100億円以上」の倒産は、岡山の不動産業「太陽殖産(株)」1社に止まった。負債額は、417億5,800万円である。同社は、1月に会社更生法の適用を申請した「林原(株)」の関連会社である。上場企業では「(株)セイクレスト」が破産、今年2件目の倒産となった。負債額は22億8,200万円である。 5月は震災関連で佐賀の旅館業「吉花亭」など64件の倒産・経営破たんが新たに発生、3月からの累計は97件に達した。6月も中旬までに、蒲郡市の旅館業「(株)三谷温泉ひがきホテル」と関連2社の倒産など数件が発生しており、今後の増加が懸念されている。