[00]最近の景気動向と企業倒産

2011/05/10 22:03 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/05/17 19:28 に更新しました ]
震災後の混乱…企業の多くは業績見通しを下方修正
 
いま世界経済のリスク要因は、日本の大震災、中東情勢の緊迫化、欧州の信用不安の3つにある。日本では東日本の大震災発生から、およそ1か月半が経過した。政府・行政の対応は、当初の人命救助やがれき撤去などから、徐々に本格的な復興への取り組みへとシフトしている。復興を軌道に乗せるには、横たわる障害の克服と復興需要をバネにして力強い成長を図るしかない。当面の景気動向は、電力の供給制約と工場被災や物流機能の低下による部品供給の滞りが生産面に影響、加えて原発事故による放射能漏れの影響もあり、下ぶれは免れない。

電力供給の制約は、企業・国民生活に大きな影響をもたらす。われわれの社会は、電力が不足なく供給されることを前提に成り立っている。そのためか、多くの人が電力を空気と同じ感覚で受け止めているが、電力利用が制限されれば、産業も国民生活もそれだけ活性をそがれることになる。事実、足元ではこれまで通りの電力供給が保証されない日々が続く。しかも、元通りの電源を確保するのは容易でない。現状を引きずれば、サプライチェーン(供給体制)の混乱と消費の低迷で、今後、企業の業績見通しは、製造業を中心に下方修正を余儀なくされるだろう。 一方、今後、順次顕在化してくる復興需要には、景気浮揚のきっかけとして大きな期待がかかっている。今回の被災程度は、規模・範囲ともに阪神・淡路大震災時を大きく超えるだけに、インフラ整備や新しい街づくりといった復興需要のスケールも、相当な規模に上るだろうことは容易に想定される。現実には復興への道のりは容易でないが、支えになるのは国民や地域の復興にかける情熱である。

第一次補正予算は約4兆円

政府は、当面の震災処理資金として約4兆円を盛り込んだ23年度第一次補正予算を成立させた。さらに第二次補正予算で、相当の復興資金を確保する方向で調整を進めている。しかし、復興資金が必要だからといって、日本の財政状態を考えれば、無計画な財政出動が許されるわけではない。過剰な資金供給が、不況期の物価高という悪いシナリオにつながらないとも限らない。当然、不急の歳出項目削除や税制改革が、論議の対象となるはずである。

為替相場は、震災直後に異常な円高となったが、欧米との円売り協調介入を機に、ともかく1ドル=81円台の一進一退が続いている。だが、インフレを警戒する新興国は徐々に政策金利を引き上げており、ECB(欧州中央銀行)も4月に金利引き上げを決定、米FBR(米連邦準備制度理事会)も低金利政策からの出口を探っている状況である。日本は、震災後の景気対策として低金利を続けざるを得ないが、そうなると各国との金利差が意識され、いま以上に円高に振れるとは予測しにくい。円安は、輸出企業にプラス効果を期待されるが、現実には被災地域では部品工場の供給体制が崩れているだけに、生産・輸出の伸びにそれほど期待できない。一方、足元での復興需要は大きいが、円安となれば資材の輸入コストは高まる。これは日本経済にとって負担で、一概に円安を喜べないということになる。

中東情勢の緊迫化は、原油高を招いている。しかし、現物がひっ迫しているわけでもなく、世界シェア2%前後のリビア原油が市場をかく乱しているというわけでもない。結局、ほとんどは投機資金の思惑で動いているとみていい。もう一つのリスク要因は、食料価格の高騰である。これは新興国の需要増と地域的な異常気象が原因だけに、時間をかけて落ち着かせるほかない。

国内の経済指標では、3月の景気ウオッチャー調査が平成12年1月の調査開始以来、最大の下げ幅を、内閣府の消費者動向調査は震災後の消費者心理の急速な冷え込みを、それぞれ示し、4月の月例経済報告は景気の基調判断を下方修正、4~6月はマイナス成長を見込んでいる。 ※5/12追記:4月の景気ウォッチャー調査では現状判断DIが前月比0.6ポイント上昇の28.3で2か月ぶりの上昇になっています。

日銀は4月の地域経済報告で全国9地域のうち近畿、四国を除く7地域で景気判断を下方修正、全般は震災の影響で生産面を中心にした押し圧力が強いとの認識を示し、とくに東北は甚大な被害、関東は生産の大幅な低下で厳しい状況と判断している。先行き見通しも不透明である。4月の政策決定会合では、23年度の実質成長率を大幅に下方修正した。  もっとも、いずれも年央から年度後半にかけて、物流網の修復、復興需要の本格化、電力不足の解消などを見込みプラス成長に転じ、新興国向けの輸出がけん引役となり、再び持ち直しの動きにつながるとみている。いずれにしても、震災による景気の変動要因をつかむには、なお多少の時間がかかるだけに、23年度前半は景気の下ぶれを覚悟しなければならず、復興需要の効果に期待をかけるのは年度後半ということになるだろう。