[00] 最近の景気動向と企業倒産

2011/04/25 18:11 に Matsumoto Norikazu が投稿   [ 2011/05/15 19:36 に更新しました ]
 
日本経済に負担を強いる多重災害のツメ跡

23年度入りである。世界の情勢はもちろん、国内情勢も変動が常である。大きな変動は、人びとに予測のつかない変化の受け入れを強いる。典型的なのが、3月に東日本を襲った巨大地震・大津波と原発事故に伴う放射性物質の拡散懸念である。震災以前は、大方の指標で景気の「緩やかな持ち直し」が見込まれていたものの、災害発生で「踊り場からの脱出」期待が一挙にしぼんでしまった。多重災害のツメ跡は日の経過とともに膨らみを増しており、今後、さまざまな面で日本経済に大きな負担を強いることは明らかである。

とにかく、復旧・復興に向けた取り組みが、焦眉の急である。23年度予算は成立したが、復興・復旧対策の行方は、10兆円以上と見込まれる巨額な復興資金の財源をどこに求めるかにかかっている。政府は復興資金として、まず第一次補正予算で4兆円程度の規模を確保する意向である。この財源を確保するためには、一部政策の見直しも必要となる。

産業の現状は、被災地工場の壊滅・損壊で自動車・電気製品などの部品供給が滞っている。その一方で、電力供給の制約もあり全体の生産システムが大きく崩れ、内需・輸出ともにマイナス作用が著しい。これからも、容易に被災工場の再建メドが立てられず、部品供給の停滞は長期化すると予想されるだけに、自動車・電気製品など製造業の生産活動は制約されるだろう。部品供給の滞りは、海外メーカーの動向にも大きく影響している。しかし、このことが日本産業の競争力を低下させ、日本製品に対する信頼を失わせるようなことになってはならない。

電力供給の制約による産業界への支障は、尾を引きそうだ。放射性物質の汚染に対する海外の反応は、きわめて敏感である。在住外国人の引き揚げ、地域製品・産品に対する輸入制限・規制の動きが広がり、ヒト、モノの交流が後退している。今後、世界的に原子力政策のあり様が問われるのは必至である。

懸念広がる震災倒産の多発

日銀は、東日本の災害による金融市場の動揺を防ぐため、3月の政策決定会合で緊急措置として、当初5兆円とした追加金融緩和を10兆円規模に引き上げた。震災後に再集計した企業短期経済観測調査(3月短観)では、震災の影響を織り込んで、当面の景況判断を下方修正した。3月の鉱工業生産指数は、当面、製造業への部品供給の滞り解消と電力供給システム復活のメドが立てにくい状況から、前月比1割の大幅減が予測されている。

今後の経過によっては、さらに景況感の悪化で震災倒産の多発も懸念される。こうなると、日本経済が再び不況に陥る懸念も生じ、世界経済にも当然大きな影響を与えていくことになる。いずれにしても、経済活動を、震災以前の水準に戻すには長い時間が必要である。

こうした状況に、中東情勢の緊迫化と欧州の財政不安といったマイナス要因がつきまとう。もっとも、回復軌道に乗ってきた米国経済は、日本にとってわずかに明るい材料の一つだが、今後の景気見通しについては、少なくとも短期的には好転の期待がもてない。

2月期の倒産件数は、1,019件(前年同月比10.8%減)と1年6か月連続の減少、負債総額は4,103億3,500万円(同6.6%減)となった。このうち負債額「1千万円以上」の倒産件数は、987件(同9.4%減)で1年7か月連続の減少となった。連続減少の期間としては、平成14年9月~17年5月までの2年9か月に次ぐ過去3番目の長さとなった。また倒産件数1,000件の大台割れは、17年9月(987件)以来5年5か月ぶりである。一連の金融支援など政策効果と企業業績の回復が支えとなった。負債総額は4,101億8,800万円(同6.5%減)で、4か月連続の減少。負債額「1千億円以上」の大型倒産は、会社更生法を申請した「林原」と関連企業2社(負債額計2,328億300万円)で、3社の負債額は負債総額の56.7%を占めた。上場企業の倒産はなかった。小規模企業(製造業その他は従業員20人以下、商業サービス業は同5人以下)の倒産件数は632件(同8.7%減)、シェアは62.0%と前月(63.9%)に比べやや低下した。
 
図:月別倒産件数・負債総額の推移(負債額1000万円以上)
※クリックで拡大
 
■負債額100億円以上の倒産
商 号 負債額
(百万円)
業種 倒産形態 倒産原因 都道府県
(株)林原 132,271 ぶどう糖・水あめ・異性化糖製造業 会社更生法 放漫経営 岡山県
(株)林原生物化学研究所 63,665 仕上用・皮膚用化粧品製造業 会社更生法 他社倒産の余波 岡山県
(株)林原商事 36,867 その他の食料・飲料卸売業 会社更生法 他社倒産の余波 岡山県